2015/10/7

総合・マクロ

ロシアで個人破産法が発効

この記事の要約

ロシアで1日、新しい破産法が発効し、個人の破産が初めて認められるようになった。未払い債務が一定の条件を満たした場合、債務者、債権者の双方が破産手続きを申請できる内容だ。ただ、潜在的な破産者の数が60万人弱と推定されるなか […]

ロシアで1日、新しい破産法が発効し、個人の破産が初めて認められるようになった。未払い債務が一定の条件を満たした場合、債務者、債権者の双方が破産手続きを申請できる内容だ。ただ、潜在的な破産者の数が60万人弱と推定されるなか、裁判所や管財人の処理能力不足が指摘されている。

個人破産が申請できるのは◇債務総額が50万ルーブル(7,600万米ドル)を超える◇延滞期間が90日を超える――の2つの条件を満たした場合。外貨建て債務にも適用される。債務者と債権者の双方に申請が認められている。

債務総額が50万ルーブル以下の場合には、破産訴訟を通じた手続きが可能だ。訴訟は債権者が起こすことになる。

支払い不能の認定後、裁判所の選任する管財人が債務再編を仲介する。債務者に定期収入がある場合には3年の繰り延べが認められる。そうでなければ、債務者の破産が宣告され、その資産が債権者に分配される。

債務者は3年間、企業の執行役に就けないほか、裁判所によって国外旅行を一時的に禁止される可能性がある。

個人破産の要件を満たす人は国内に60万人弱いると推定される。申請数の予測には機関によって差が大きく、債権回収業者は20万件、連邦執行局では40万件を見込んでいる。

いずれにしても、裁判所の仕事量が2倍程度に増加するとみられ、他の業務に支障をきたす恐れがある。また、ロシアには管財人が1,000人しかいない。これらの管財人は通常、富裕層や企業を顧客としており、報酬が1件1万ルーブルに制限される個人破産の魅力は小さい。

ロシアにおける消費者金融の債務残高は6兆ルーブル(9,080億ドル)、住宅ローンは3兆ルーブル(4,540億ドル)。ロシア銀行各社の個人融資事業における延滞債権は約1兆ルーブル(150億ドル)にも上り、景気後退で返済能力が低下する中、個人破産の法制化は大きな意味を持つ。ただ、制度が債務者と債権者のどちらの利害に一致するかという点については、現段階で答えを出すのは難しい。当局が個人の支払い能力の回復に向けて、制度をどれだけ生かせるかがカギを握りそうだ。

■銀行による申請、多数に

モスクワ調停裁判所では申請受付初日の午前11時の時点で108件が受理された。銀行による申請が多いようだ。

ズベルバンクは元「バナナ王」のケフマン氏について破産申請を行った。その債務額は推定45億ルーブル(6,900万ドル)に上る。

VTBのリテール事業VTB24では、自己破産の前提を満たす顧客が14万3,000人おり、債権総額は870億ルーブル(13億ドル)に上るもようだ。(1RUB=1.84JPY)