ハンガリーは「量・質ともに人材不足」=自動車大手が警鐘

ハンガリーの人手不足が深刻化している。手厚い優遇措置の恩恵を享受する大手自動車メーカーでも、将来的に人材が確保できるか懸念する声があがっている。政府は被用者の待遇向上に向けて、賃上げした企業に社会保険料減額を認める案を検討中だ。ただ、業界は「賃金上昇自体がハンガリーの競争力を弱める」とみており、住環境・保育機会の充実など、行政面の改革を求めているもようだ。

ブダペストで開催された業界見本市「オートモーティブ・ハンガリー」の座談会でアウディ現地子会社のケスラー取締役は19日、「人的資源は量・質ともに不足している」と問題を提起。当局に対し、「住環境と地域インフラの整備に注力し、労働者が引越したいという街を作ることが必要」と訴えた。

メルセデスベンツのヴォルフ現地取締役も「人材不足は将来に向けて解くべき課題」とし、工場のあるケチケメートの自治体が学校教育の充実、幼稚園や労働者住宅といった施設の整備を行うよう要請した。また、「ハンガリー企業は賃金上昇スパイラルに巻き込まれないよう注意が必要」と呼びかけた。

25年前に進出したスズキのウルバーン現地子会社副社長は、「部品調達は投資戦略と切っても切れない関係にあるが、(提携企業先で)技術革新に必要な設計エンジニアなどの専門家が不足している」と指摘。また、税・社会保険料負担が隣国より大きく、手取り賃金が2割少ない状況を生み出していると話した。

ハンガリーの独語新聞『ノイエ・ブダペスト・ロイド』によると、オルバン首相が就任した2010年以降、西欧に移住した若者は100万人弱に上る。

ハンガリー中央統計局(KSH)が19日発表した8月の税込賃金は、前年同月比で6.9%上昇。一方で、物価は全く上昇していない。

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