欧州連合(EU)の欧州議会が検討している同一労働同一賃金を規定する新ルールについて、チェコの運送事業者が反対の声を強めている。22日付のウェブ紙『EURACTIVE』によると、同議会が現在検討している労働指令改正案では、同一労働同一賃金について2020年までの国内法化が求められている。しかし競争力の低下などを懸念するチェコの運輸業界は輸送サービスを新ルールの適用除外とすることを要求している模様だ。
同指令案については昨年7月、加盟各国の事前の合意にも関わらず欧州議会で採択されず法案の練り直しが行われてきた。その後改定された草案は同議会の運輸・観光委員会で今月10日に採択される見通しとなっていたが、結局全面的な合意には至らず輸送業者の同一賃金に関連した部分だけが採択されない形になった。
チェコの運輸業界は輸送サービスを「モビリティパッケージ」と定義し、新たな規制の例外とするよう要求している。同指令案に反対するチェコの運輸事業者団体CESMADのネメチ氏は、「欧州議会はモビリティパッケージを葬り去った」と述べた。チェコ選出のドラバヨバ欧州議員は「妥協が成立しなかったことは新ルールが国際道路輸送にも適用されることを意味する」と話した。
チェコの運輸関連企業は当初から新しい労働指令に反対してきた。同国の産業・運輸連盟や商工会議所も同様の立場に立つ。彼らの懸念は賃金の上昇及び賃金計算に関連した事務手続きの煩雑化にある。ドライバーが頻繁にEU域内各国の国境を越えて移動する運送会社では事態は深刻だ。
賃金の引き上げにより域外の同業者に対する競争力が低下する恐れもある。また同指令案では休憩時間を一律的に導入することを義務付けており、駐車場の少ないチェコでは駐車場探しが課題になると業界関係者は話す。
欧州議会は今年5月に改選が予定されている。そのため同指令の改正案が今後可決されるかどうかは新議会が形成されるまではっきりしない見通しだ。