ウクライナで新内閣発足、新首相にシュミハリ副首相

ウクライナの最高会議(国会)は4日、オレクシー・ホンチャルク首相(35)の辞任を賛成多数で承認するとともに、デニス・シュミハリ副首相(地域開発政策担当、44)を新首相として選出した。背景には、支持率の低下するホンチャルク首相を更迭することで、自らの支持基盤を守りたいゼレンスキー大統領の意向があるとみられる。ただ汚職対策で意見が対立したとも伝えられ、今後の改革実行にブレーキがかかる懸念も浮上している。

ゼレンスキー大統領はホンチャルク内閣について、「インフレ抑制や闇経済対策、民営化などで一定の成果を上げたが、国民の大きな期待にこたえきれなかった」と指摘。ウクライナは「新しい顔だけでなく、新しい頭脳と新しい心を必要としている」として新内閣の仕事に期待を表明した。

シュミハリ新首相は前内閣の改革路線を踏襲する姿勢を確認したうえで、財政危機回避に向け、今年度予算を見直す方針を明らかにした。また、工業生産や農業生産、社会問題に優先して取り組む姿勢を示した。

ウクライナ財政は今年1-2月期に160億フリブナ(約5,600万ユーロ)の赤字を計上した。関税収入が目標を130億フリブナも下回っている。国内総生産(GDP)は増加傾向にあるが、工業生産は4カ月連続縮小している。

シュミハリ新首相は経済学を修め、西欧留学の経験もある。民間で働いたのちに政府系機関でキャリアを積んできた。しかし、富豪(オリガルヒ)のリナト・アハメトフ氏の企業で財務を担当していた過去があり、政府がオリガルヒによるウクライナ経済の支配を打破する政策を進めるのが今以上に困難になるのではとの観測が浮上している。

ゼレンスキー大統領も、オリガルヒのイホル・コロモイスキー氏の経営するテレビ会社で有名になった経歴があり、その関係が政治運営に影響しているといわれる。大統領府関係者によると、ホンチャルク氏は先月28日に大統領から、コロモイスキー氏の意向に沿って、国営エネルギー企業の経営陣解雇を思いとどまるよう示唆されたが応じなかったといい、大統領と首相の足並みがそろわなかったことが最終的に首相の辞任につながったもようだ。

政治学専門家の中には、首相が力をつけるのを大統領が嫌い、内閣を自らの「おまけ」のように扱っているという声も聞かれる。これにより、政治の分権が機能しないリスクもある。

ホンチャルク氏は昨年8月、1991年のウクライナ独立以来、最年少の35歳で首相に就任したが、わずか6カ月で退任することとなり、首相在任の最短記録を更新した。(1UAH=4.06JPY)

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