ハンガリー照明機器のタングスラム、植物工場の開発運営に本腰

ハンガリーの照明機器メーカー、タングスラム(Tungsram)が屋内で野菜や果物を生産する植物工場の開発運営に取り組んでいる。同社のLED照明を使うことで必要な光量を調節し、年間を通じた野菜や果物の生産を可能にする計画だ。植物の生育に適した照明を開発するため今後も実験を進め、植物工場事業を本格的に展開していく。

室内で植物を栽培する植物工場では日照に代わる照明が生育の鍵を握る。同社はLEDを用いて自然光と同様の光量を与えることで、高層建築物などを垂直的に利用する垂直農法の質の向上を図っている。植物工場は水の使用量が少ない上、農地自体が不要で、農薬や土壌汚染の問題も発生しないという利点がある。同社の植物工場では遺伝子組み換え技術を用いない農作物を生産している。

タングスラムは屋内での栽培に適した光の波長を見つけるための実験を継続している。屋内農業は1次産業としての農業というよりもインダストリー4.0(I4.0)に近く、センサーやモニター、ドローンやソフトウエア、人工知能(AI)を駆使して行われる。植物工場に最適なシステムはまだ発展途上のため、同社は実験を通して栽培技術を向上させる方針だ。これに向けハンガリーの研究機関や英国のレディング大学、標準化でリードするドイツのフラウンホーファー研究機構などで同社の照明を用いた実験が行われている。

同社は本拠を置くブダペストに本格的な垂直農場を設置し、研究者に門戸を開いて研究を促進することを計画中だ。植物工場によりハンガリーが通年で野菜と果物を自給できるようになるとの期待を示している。

タングスラムは1989年に米ゼネラルエレクトリック(GE)に買収されたが、2008年にMBO(マネジメント・バイアウト)を実施し再び独立した。同社は家庭用の照明器具のほか、自動車メーカーや農業向けなどの産業用照明機器の開発・生産を行っている。

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