欧州連合(EU)加盟国で12月27日、新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。感染拡大に歯止めがかからず多くの国で外出制限や店舗の閉鎖などが続く中、英国や米国、カナダなどに続き、EUでもワクチン接種が本格化することになる。
接種が始まったのは、米製薬大手ファイザーとドイツのバイオ企業ビオンテックが共同開発したワクチン。欧州医薬品庁(EMA)の勧告を受け、欧州委員会が21日にEU域内での販売を条件付きで承認した。条件付き販売承認(CMA)は緊急時に迅速な承認を可能にするための手続きで、製薬会社は通常、6カ月ごとにEMAに安全性について報告しなければならないが、今回は1カ月ごとの報告が義務付けられる。
EUは同ワクチンについて、最大3億回の調達契約を交わしている。欧州委が人口に応じて加盟国に配分する仕組みで、ドイツ国内のビオンテックの工場やファイザーのベルギー工場から出荷される。各国とも医療従事者や高齢者などから優先的に摂取し、段階的に対象を広げる。
欧州委は27日から3日間を「ワクチン接種デー」とし、各国で一斉に接種を開始するよう促していたが、ドイツやハンガリーなどでは26日から一部地域で接種がスタート。27日にはフランスイタリア、スペインなどでも接種が始まった。
欧州委のフォンデアライエン委員長はビデメッセージで「ワクチンは全ての加盟国で同時に利用可能になる。(集団免疫に必要な)十分な数の人々にワクチンが行き渡れば、家族や友人との集まりや旅行を再開できる」と強調した。
ファイザーとビオンテックのワクチンは治験で95%の効果が確認されている。英政府が世界に先駆けて12月2日に緊急使用を承認し、8日に同国で接種が始まった。米食品医薬品局(FDA)も11日に緊急使用を許可し、14日に接種がスタートしている。同ワクチンはこれまでにEUを含め、45カ国以上で条件付き承認や緊急使用許可を得ている。