ロシア、エネルギー転換を視野に水素プロジェクトを始動

エネルギー転換で従来型資源の意義が薄れることを見越し、ロシア政府が水素技術プロジェクトを始動させている。エネルギー省は現在、日本およびドイツの提携先と共同で水素戦略を策定中だ。エネルギー大手のロシア原子力公社(ロスアトム)、ノバテク、国営ガスプロムは水素の生産・輸出に向けて、それぞれ異なる技術の開発に取り組んでいる。

アレクサンドル・ノヴァク副首相は「製造コストが安くなり、輸送に関わる問題が解決できれば、2050年までに水素が世界の電源構成の7~25%を占める」という専門家の予測を指摘。天然ガス田や、原子力エネルギー関連ノウハウ、エネルギー研究施設など、ロシアがすでに持っている資産を活用する方向だ。

世界的な原発設備大手であるロスアトムは、国内外からの受注を受けて技術の開発・改善に取り組んでいる。原子力で発電した電力を用いて水を電気分解し、水素を生成することも視野に入れている(イエロー水素)。また、水素サプライチェーン・プロジェクトを進める川崎重工業と提携し、2024年から輸出を開始する計画だ。

天然ガスの民間最大手であるノバテクは、北極圏ヤマル半島の天然ガス液化施設で、水蒸気メタン改質(SMR)設備を建設。二酸化炭素(CO2)の回収・地中貯留(CCS)技術と組み合わせて水素を生産することを計画している(ブルー水素)。

ガスプロムは、天然ガスパイプラインの耐用年数が来る前に天然ガスの重要性が低下するとみて、パイプラインを水素輸送に転用する方向だ。また、熱分解で天然ガスに含まれるメタンから水素と固体炭素を取り出す技術に注目している(ターコイズ水素)。

また、政府による大掛かりなプロジェクトは発表されていないものの、ロシア北西部では風力発電を水素生産に活用する前提条件が整っている。海沿いの地域は風力発電に適しており、輸送路としては天然ガスパイプラインを利用できる(グリーン水素)。

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