欧州連合(EU)加盟国は1日に開いた大使級会合で、新型コロナウイルスワクチンの配分について協議し、感染状況などをもとに最もワクチンを必要としている5カ国に優先的に割り当てることで合意した。EUでは人口比に応じて各国にワクチンが供給される仕組みだが、感染力が強い変異ウイルスが猛威をふるう中、特に供給不足が深刻な東欧諸国などへの配分を増やし、遅れている接種を加速させる。
「連帯メカニズム」と呼ばれる新システムに基づき、今年4~6月期に供給される予定の米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチン1,000万回分のうち、計285万回分をブルガリア(110万回分)、クロアチア(68万回分)、スロバキア(60万回分)、ラトビア(37万6,000回分)、エストニア(4万1,000回分)に追加で配分する。
オーストリア、チェコ、スロベニアは自国への追加配分を求めて5カ国への優先割り当てに反対したが、追加は認められず、当初の予定に沿ってワクチンが供給される。一方、連帯メカニズムに合意した19カ国には、本来の人口比より少ない計666万回分が供給されることになる。
加盟国は欧州委員会がまとめて調達するワクチンを人口比に応じて購入する権利を持つが、どのワクチンをどれだけ確保するかは調整が可能。調達プロセスの初期段階は超低温での保管が必要なく、価格も比較的安い英アストラゼネカ製ワクチンの購入を増やす国が多かったが、その後、同ワクチンの供給に深刻な遅れが生じた結果、ファイザー製の割合を増やした国と比べ、人口比で受け取ったワクチンが少なくなっている。
こうした中でオーストリアやチェコ、ブルガリアなど6カ国は3月半ば、欧州委に書簡を送り、加盟国へのワクチン供給が平等に行われていないとして是正措置を検討するよう求めた。オーストリアのクルツ首相は「人口比でみると、(人口700万人の)ブルガリアが(人口40万人の)マルタの3分の1しか受け取れていないことになる」などと批判。EUは夏の終わりまでにEU全体で成人の7割への接種を完了するとの目標を掲げているが、6カ国は「現行システムのままでは夏までに加盟国間でさらに格差が広がり、一部の国は早期に集団免疫を獲得する一方、大幅に遅れる国も出てくるだろう」と警告していた。
EU議長国ポルトガルのコスタ首相は「5カ国への追加配分により、6月末までに全ての加盟国で人口の少なくとも45%に接種できる見通しがついた」と今回の合意を歓迎。一方、あるEU高官は連帯メカニズムに反対したオーストリアなどの対応について、「露骨な連帯感の欠如は簡単には忘れられないだろう」と強く批判した。