●地域全体の成長見通しはユーロ圏平均の4.4%を上回る見込み
●成長率予測の最高はハンガリーの6.9%、最低のチェコは3.7%
オーストリアのエルステ銀行は7月30日に発表した中東欧経済の調査レポートで、同地域の見通しが全般的に明るいという見方を示した。各国の2021年成長予測を上方修正するとともに、地域全体としてはユーロ圏平均の4.4%を上回ると見込んでいる。理由として、コロナ危機の影響が予想を下回ったことや、欧州復興基金による景気押し上げ効果が見込まれることを挙げている。一方、パンデミックの影響が不確実要因に成り得るとする。
オーストリアを除く調査対象国は、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、セルビア、クロアチアの6カ国。各国の成長予測は最高のハンガリーが6.9%、最低のチェコでも3.7%。ルーマニアは従来の4.2%から6.7%へ引き上げた。
コロナ危機の影響が比較的小さかったことについては、ロックダウン(都市封鎖)措置で流通・サービス業が最も大きく売上を減らす一方、中東欧の伝統的な主要産業である製造業はそれほど大きく影響を受けなかったと説明している。経済の堅調を受けて、中東欧の主要株価指数は上半期に加重平均で17.6%上昇した。
復興基金による国内総生産(GDP)の押し上げ効果は、2026年に最も大きいルーマニアで2.9ポイント、最も小さいチェコでも1.2ポイントとなる見通し。また、基金の国別助成額を対GDP比でみると、ルーマニアが13.4%、クロアチアが13%と多く、最低のチェコは3.2%にとどまる。
また、今回の予測では検討の対象とならなかったが、復興基金の一部は支給の条件としてデジタル分野や持続可能性における一定の要件を満たすことが求められており、これが経済の構造改革を促進してGDPにプラス効果をもたらすと指摘している。