●上げ幅は市場予測を上回る
●中銀は政府の批判を一蹴
チェコ中央銀行(CNB)は9月30日、主要政策金利である14日物レポ金利を0.75ポイント引き上げ、1.5%に設定した。利上げは3会合連続。市場は0.5ポイントの上げ幅を予想していた。物価の上昇が見込まれる中、先手を打つ形で大幅な追加利上げに踏み切った。ロンバート金利(上限金利)も0.75ポイント引き上げ、2.5%に設定した。公定歩合(下限金利)は0.45ポイント増の0.5%に引き上げた。
同国の8月のインフレ率は前月から0.7ポイント増の4.1%に拡大し、2カ月連続で目標水準(1~3%)の上限を上回った。食品価格の高騰と燃料価格の上昇に加え、観光再開に伴うサービス部門の価格上昇が影響している。中銀は今後について、家庭用光熱費の値上がりにより冬までは急激な上昇がみられるものの、引き締め策の継続により来年から目標水準の中央値(2%)に近づくとみている。
同国経済は4-6月期に国内総生産(GDP)が前年同期比8.2%増と急伸し、6四半期ぶりにプラス成長へと転じた。今後の成長率見通しについては、今年は3.5%、来年はそれをわずかに下回る水準を見込んでいる。
中銀は声明で、賃金の急速な伸びと、それに伴う消費支出の大幅な増加がインフレ期待を高めていると指摘。「目標値を上回るようなインフレ期待の膨らみは容認しない」とし、予想外の大幅な利上げを決めたと説明した。
今後については「引き締めのペースはインフレの動向と経済見通し次第だ」とし、インフレ率のさらなる上昇がみられる場合に追加利上げを行う可能性を示唆した。
■政府は中銀の政策を批判
今回の利上げは、今月8日と9日に行われる下院選挙の1週間前という微妙なタイミングで実施された。与党ANOのバビシュ首相は、中銀の決定はチェコ経済に損害を与えるものだと批判。アレナ・シレロヴァ財務相も「インフレの原因は供給量並びに労働力の不足であり、利上げは解決にならない」と述べるなど、神経をとがらせている。
これに対し中銀のルスノク総裁は「CNBは独立した機関であり、政府の指示は受けない」と述べるとともに、景気の過熱を抑えるためにさらなる利上げが必要だとの認識を示した。