●中東欧諸国からは早期加盟を支持する声
●モルドバ、ジョージアとともに通常の手続きに沿って処理
欧州連合(EU)加盟国は10~11日にフランスで開いた首脳会議で、ロシアの軍事侵攻にさらされるウクライナによるEU加盟申請への対応を協議した。ウクライナは即時の加盟を求めているが、特例扱いはできないとして拒否し、通常の加盟手続きを適用することを決めた。
ウクライナのゼレンスキー大統領は2月28日、軍事侵攻を進めるロシアへの対抗力を強化するため、EUに加盟を申請。ロシアの脅威にさらされるモルドバ、ジョージアも追随し、3日に加盟を申請していた。
首脳会議閉幕後に発表された「ベルサイユ宣言」では、「ウクライナは欧州の家族の一員だ」と述べるなど、ウクライナとEUの連帯を強調。ただ、加盟で特別扱いはせず、モルドバ、ジョージアとともに通常の手続きに沿って申請を処理する方針を打ち出した。
EU新規加盟は、まず対象国を加盟候補国として認定した上で、加盟交渉を開始し、少なくとも数年間をかけて協議を行った末に決まるのが通例だ。加盟候補国として認定されるまでにも相当の時間がかかる。さらに、加盟交渉では対象国が政治体制や汚職対策などでEUが求める基準を満たすことを確認する必要がある。ウクライナはこうした手続きを簡素化し、すぐに加盟できるよう求めていた。
首脳会議ではリトアニアのナウセーダ大統領が、即座の加盟は無理としても、すぐに加盟候補国に認定し、通常より早い期間での加盟実現を目指すよう求めるなど、中東欧諸国を中心に早期加盟を支持する声が出た。しかし、議長国フランスやオランダなどが反対。加盟問題は全会一致での決定が必要となるため、ウクライナの特別扱いはしないことになった。
仏マクロン大統領は、交戦中の国と加盟手続きを進めることはできないとコメント。オランダのルッテ首相は、すでに加盟候補国と認定されながら、加盟に至っていないアルバニア、北マケドニアなど西バルカン諸国のことを考慮すると、特例は認められないとの見解を示した。