●「戦争の資金源を断つ必要がある」=フォンデアライエン委員長
●ベラルーシの銀行もSWIFTから排除
欧州委員会は11日、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアへの追加制裁を発表した。米欧日など主要7カ国(G7)と協調し、貿易上の優遇措置である「最恵国待遇(MFN)」を撤回するなど、ロシアへの圧力を強める。
MFNは世界貿易機関(WTO)の基本原則の1つ。これまで各国・地域はロシア製品に他国と同じ低い関税を課してきたが、MFNが適用されなくなると、関税面での優遇措置が受けられず、ロシア製品を輸入する域内の企業は高い関税を支払わなければならなくなる。
また、欧州連合(EU)は国際通貨基金(IMF)、世界銀行などの国際機関に、ロシアの加盟国としての権利を停止するよう働きかけ、融資などを受けられないようにする。
さらに高級品のロシア向け輸出を禁止する一方、ロシアの主力輸出品である鉄鋼製品について、EUへの輸入を差し止めるほか、暗号資産(仮想通貨)を使って制裁を回避できないよう、監視を強化する。
欧州委のフォンデアライエン委員長は声明で「ロシアをさらに孤立させ、戦争の資金源を断つ必要がある」と強調した。
EUはこれに先立ち、9日の閣僚理事会でロシアとそれに協力しているベラルーシに対する追加制裁を決定していた。ロシア向けの制裁では、EU域内の資産凍結や渡航禁止措置の対象トに新たに160人を追加した。プーチン大統領とつながりの深いオリガルヒ(新興財閥)とその家族や、国会議員などが対象。ロシアの航空大手エアロフロートや、通信・デジタル・製薬企業などの幹部がリストに含まれている。今回の措置で制裁対象は862人の個人と53団体となった。
さらに、船舶のナビゲーションシステムや無線通信技術の輸出を禁止するほか、制裁の抜け道を封じるため、暗号資産を通常の証券などと同様の扱いとし、売買や投資サービスの提供を禁止する。
一方、ベラルーシに対しては、ベルアグロプロム銀行など3行を「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除するほか、ベラルーシ中央銀行が保有する資産や外貨準備に関連した取引を禁止する。