2022/3/30

自動車

中東欧自動車産業、電動化がもたらすリスク

この記事の要約

●EV関連の投資は西欧に集中、退行するエンジン車生産は東欧に移管●政府による直接的な働きかけは望めない=米識者自動車の電動化が、チェコやスロバキアなど東欧諸国の経済に打撃を与える懸念がある。電気自動車(EV)関連の投資が […]

●EV関連の投資は西欧に集中、退行するエンジン車生産は東欧に移管

●政府による直接的な働きかけは望めない=米識者

自動車の電動化が、チェコやスロバキアなど東欧諸国の経済に打撃を与える懸念がある。電気自動車(EV)関連の投資が西欧で実施される一方で、市場から消えていくエンジン車の生産が東欧へ移管されているためだ。生産戦略は大手完成車メーカーに決定権があり、各国政府の影響力は限定されている。

オーストリア国立銀行が28日開催したワークショップで、米ネブラスカ・オマハ大学のペトル・パヴリーネク教授は、今後20年間はエンジン車からEVへの移行が継続する見込みと前置きした上で、独フォルクスワーゲン(VW)の新型EV「トリニティ」の工場がヴォルフスブルク郊外、米テスラのギガファクトリーがベルリン近郊に設置されるなど、西欧がEV関連の投資先となっていると指摘。東欧には時代遅れになりつつあるエンジン車生産が移管されており、地域の自動車産業の競争力を低下させかねないと警鐘を鳴らした。

「特にスロバキアのリスクは大きい」と同国シンクタンクGLOBSECのソニャ・ムジカーロヴァー主任エコノミストはみる。スロバキアに生産拠点を持つVW、仏PSA、起亜自動車、英ジャガー・ランドローバー(JLR)は、ほとんど商用車を手がけていない。電動化が乗用車から進んでいくこと、同国工業生産の54%を自動車産業が担っていることを考慮すると、危機的な状況が明確になる。

チェコのシンクタンク、ユーロピアムのミハル・フルビー調査員は同国政府がEモビリティにほとんど目を向けてこなかったことが、大型工場を誘致できなかった背景にあるとし、公的投資を迅速に実施する必要性を説いた。パヴリーネク教授はこれに対し、政府が欧州連合(EU)におけるエンジン車販売を2035年から禁止する措置に反対したことを引き、Eモビリティ政策強化は見込めないという見方を示した。いずれにしても、政府はメーカーに対し、賃金水準や人材確保などを通じた間接的な働きかけしかできず、直接的な対策を講じるのは難しいという考えを明らかにした。