2022/7/20

テクノロジー

廃坑で蓄電、ポーランド研究者が効率70%のCAESを開発

この記事の要約

●TESを空気貯槽に組み込むことでRTE70%、蓄熱能力95%を達成●貯槽の地下設置により他用途との競合を避けられるメリットポーランドの科学者チームが、鉱山の廃坑を活用した圧縮空気蓄電システム(CAES)を開発した。蓄熱 […]

●TESを空気貯槽に組み込むことでRTE70%、蓄熱能力95%を達成

●貯槽の地下設置により他用途との競合を避けられるメリット

ポーランドの科学者チームが、鉱山の廃坑を活用した圧縮空気蓄電システム(CAES)を開発した。蓄熱システム(TES)を空気貯槽に組み込むことで熱のロスを抑え、充放電効率(RTE)で70%、蓄熱能力で95%を達成したという。廃坑に空気を貯めるため、地上で整備するときのような制限がないのも利点だ。成果は学術誌『ジャーナル・オブ・エナジー・ストレージ』10月号に掲載されるが、すでにネット公開されている。

開発したのは、シロンスク工科大学のウカシュ・バルテラ教授らだ。空気貯槽はシリンダーを縦につなげた形で、空気が出入りするときに蓄熱システムを通る。入るときには蓄熱材に熱が伝わって空気の温度が下がるため、貯蔵時に空気から熱が失われづらくなる。逆に、出るときには蓄熱材から熱を得るため、外部熱源で空気を温めなくても発電機を回せる。また、蓄熱材を包む素材を薄くできるため、低コスト化につながる。

空気貯槽の大きさ6万立方メートル、最大圧力5メガパスカル(MPa)を想定して試算したところ、蓄電能力は140メガワット、充放電効率(RTE)は70%、蓄熱槽効率は95%に上るという。条件が良ければ最大圧力を8MPaまで上げることも可能だ。

チームの調査によると、ポーランドで稼働する炭鉱、銅鉱、岩塩鉱で使用中止が予定されている抗は39本で、その約半分が地下水を汲み出すのに使われている。最も深いものは1,300メートルを超えるという。

研究者チームは、「坑道は閉鎖されると放置されることが多い。しかし、CAESの立地としては発電・送電所や、大口需要家のいる工業地帯に近い地の利がある」とみる。また、「空気貯槽を地上に設置しようとする場合、他の用途との競合があるが、地下ならばその心配は小さい」とし、多くの利点があると自信を示している。