ECBが0.75ポイント利上げ、物価高で前回に続き

●9月に続いて通常の3倍となる大幅利上げに踏み切った

●ラガルド総裁は景気後退の可能性を考慮する姿勢もにじませる

欧州中央銀行(ECB)は10月27日に開いた定例政策理事会で、政策金利を0.75ポイント引き上げることを決めた。物価高に歯止めがかからないため、9月に続いて通常の3倍となる大幅利上げに踏み切った。

利上げは3会合連続。主要政策金利は1.25%から2.0%、民間金融機関が余った資金をECBに預け入れる際の金利(中銀預金金利)は0.75%から1.5%に引き上げられる。2009年以来の高さだ。新金利の適用は11月2日から。

ECBはロシアのウクライナ侵攻などの影響でエネルギー、食品価格が高騰していることを受けて、7月に11年ぶりの利上げを実施。政策金利を0.5ポイント引き上げた。それでも効果がなく、ユーロ圏のインフレ率が過去最高を更新し続けているため、9月に0.75ポイントの追加利上げを実施した。

ユーロ圏では景気後退のリスクが高まっており、イタリアなど一部の国でECBの急激な金融引き締めに難色を示す声が出ている。それでも、ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、ECBが物価の番人であることを強調し、追加利上げへの理解を示した。

今回の理事会では金融引き締めの一環として、「TLTRO」と呼ばれる長期資金供給オペ(金融機関が融資を増やすことを条件に低利の長期資金を供給するオペ)の金利を11月23日から主要政策金利に合わせることを決めた。また、ラガルド総裁はコロナ禍前から実施してきた「資産購入プログラム(APP)」(7月1日に終了)で買い入れた国債などの資産について、持ち分を減らすことを示唆し、その「基本原則」を12月の理事会で検討する方針を示した。

一方、ラガルド総裁は引き締め局面に入ってから、記者会見で「今後も複数の会合で利上げを決める」との見通しを示していたが、今回は「今後も利上げを続ける」という言い方に切り替えた。“タカ派” なトーンを弱めた格好だ。さらに、ユーロ圏が景気後退に陥る可能性に「気が付いていないわけではない」とも述べた。

こうしたコメントについて市場では、ECBがインフレ率を適正水準に保つことを優先し、12月15日に開く次回の政策理事会で再利上げを決め、23年になっても利上げを続けるのは確実だが、景気にも目配りし、利上げのペースは当初の予想より弱まるとの見方も出ている。

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