●輸入禁止は欧州タイヤ業界に吹く逆風を強めることに
●合成ゴムのロシア依存が下がるに従い仕入れ価格は大幅に上昇
ポーランドが欧州連合(EU)の対ロシア制裁に合成ゴムの輸入禁止を盛り込むことを働きかけている。ロシアの対ウクライナ侵攻開始から今月24日で1年が経つのを前に、EUが追加制裁を準備しているのに伴う動きだ。ただ、実際に輸入が禁止されれば、欧州タイヤ業界に吹く逆風がさらに強まるのは必至だ。
伊ピレリや仏ミシュラン、独コンチネンタル、フィンランド・ノキアンは欧州工場で主にロシアから調達した合成ゴムを加工している。対ウクライナ侵攻を受けて、EUの合成ゴム輸入に占めるロシアの割合は21年の50%強から22年には30%前後に低下したものの、代替に伴い仕入れ価格が大幅に上昇した。
このほかにも、エネルギー価格の高騰、ロシア生産事業からの撤退、高インフレによる新車装着・交換タイヤの販売減といった要素が重なり、タイヤメーカーは苦境のさなかにある。ここでロシアから合成ゴムが輸入できなくなれば、ロシアよりも欧州のダメージが大きいとの見方もある。
EUに禁止を働きかけている事実を認めたポーランドの化学企業シントスは、独ショコパウ工場で来月にブタジエンゴム生産を再開する予定だ。ただ、同社製品によって、欧州がロシアから輸入するゴムの種類全てを代替することはできない。ロシアが世界の主要生産国となっているグレードのゴムも多く、調達先変更の障害は大きい。