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2010/3/31

総合 - ドイツ経済ニュース

景気の大幅悪化懸念遠のく、企業はコスト削減から事業拡大へ転換

この記事の要約

ドイツ経済の回復が今後も続く公算が高まってきた。2009年第4四半期の国内総生産(GDP)がゼロ成長に落ち込み景気の腰折れ懸念が出ていたが、企業景況感は着実に明るさを増し、2010年の最大のマイナス要因になるとみられてい […]

ドイツ経済の回復が今後も続く公算が高まってきた。2009年第4四半期の国内総生産(GDP)がゼロ成長に落ち込み景気の腰折れ懸念が出ていたが、企業景況感は着実に明るさを増し、2010年の最大のマイナス要因になるとみられていた雇用の大幅悪化も杞憂に終わる見通しが強まっている。財界系シンクタンクIWドイツ経済研究所のミヒャエル・ヒューター所長は『南ドイツ新聞(SZ)』のインタビューで「経済成長が一時的に休止することはあっても再び底割れすることはない」と断言した。

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独GDP成長率は09年第2四半期に前期比で実質0.4%となり、5四半期ぶりにプラス成長となり、第3四半期には同0.7%へと加速した。第3四半期は企業の投資活動と輸出がプラスに転じており、エコノミストの間には景気の先行きに対しやや楽観的な見方が広がっていた。

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こうした観測は第4四半期のGDP減速が明らかになると後退。記録的な寒波と積雪の影響で建設業や小売業の業績が悪化した今年2月にはやや悲観的な見方も出てきた。ギリシャ財政問題に端を発するユーロの信認問題も影を落としていた。

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だが、そうしたなかでも企業景況感は回復基調が続いており、Ifo経済研究所が毎月発表する同指数は3月には大幅に改善した。経済紙『ハンデルスブラット』などの委託で世論調査機関のPsephosが2月末から3月上旬にかけてドイツの経営者800人を対象に実施したアンケート調査をみると、業績回復の手ごたえを感じる企業が増えていることが分かる。

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それによると、輸出事業の現状が「良い」「どちらかというと良い」との回答は計68%に達し、1年前の調査の37%から約2倍に拡大。国内事業の現状についても72%が同様の回答をした。今後1年間の輸出見通しについては「現在よりも良くなる」と「現在同様に良好」が82%を占め、今後1年間の国内事業の見通しについても83%が肯定的な見通しを示す。投資計画でも額を「増やす」は36%に達し、09年初頭の15%から2倍強に増えている。

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企業が投資拡大に前向きな姿勢を示す背景には、経済危機を受けて人員削減を含むコスト削減を実施した結果、市場開拓や研究開発の強化に乗り出す余力が出てきたことがあるようだ。コンサルティング会社サイモン・クチャーアンドパートナースがドイツ、オーストリア、スイス、北欧の企業経営者2,200人を対象に行ったアンケート調査では、今後の重点課題として売上拡大を挙げた割合が68%に達し、コスト削減の28%を大きく上回った。経営者の過半数は「経済危機はすでに克服された」とみている。

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貸し渋り懸念も弱まる

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こうした事情を反映し、Ifo経済研究所の3月の雇用指数(今後3カ月間に雇用を増やすか減らすか、同数を維持するかを約7,000社に質問して算出、2000年=100)は100.6に達し、6カ月連続で改善した。調査対象の4業界のうち小売を除く製造、建設、卸売の3業界で上昇しており、労働市場が今後、大幅に悪化する可能性は低いとみられる。連邦雇用庁(BA)傘下の労働市場・職業研究所(IAB)は今月中旬、2010年の独失業者数を従来予測の平均410万人から350万人へと大幅に引き下げた。

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これまで産業界が批判してきた金融機関の融資抑制も着実に弱まっているようだ。リーマンショックを受けIfoが毎月実施するようになった銀行の融資状況に関する企業アンケート調査によると、融資が抑制的だとする回答は3月に38.7%となり、3カ月連続で低下した。40%を下回るのは2カ月連続。同比率は09年2月から今年1月までの12カ月間、常に40%を上回っていた。

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流動性の危機も大幅に後退しており、欧州中央銀行(ECB)は金融危機に対応して続けてきた銀行への特別資金供給策を段階的に縮小する「出口戦略」を昨年12月に開始した。

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