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2010/4/14

総合 - ドイツ経済ニュース

ダイムラーがルノー・日産と戦略提携

この記事の要約

高級車大手の独ダイムラーとルノー・日産は7日、幅広い分野で提携すると発表した。自動車業界では開発費の拡大や事業のグローバル化を背景に規模のメリットを追求する動きが強まっており、両グループは緩やかながらも将来の提携強化の可 […]

高級車大手の独ダイムラーとルノー・日産は7日、幅広い分野で提携すると発表した。自動車業界では開発費の拡大や事業のグローバル化を背景に規模のメリットを追求する動きが強まっており、両グループは緩やかながらも将来の提携強化の可能性を視野に入れた戦略的な協力関係を構築。各ブランドの独自性を保ちながら収益力を強化していく。ダイムラーは不振の小型車事業の立て直しを急ぐ。

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両グループは事業提携と資本提携の2本立てで協力関係を打ち立てる予定で、事業提携は(1)小型乗用車(2)エンジン(3)小型商用車の3分野で具体的な計画がまとまった。

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小型乗用車については両グループ共通のモデルを共同開発しダイムラーの「スマート」とルノーの「トゥインゴ」の車体構造に採用、2013年以降に市場投入する。2人乗りモデルはダイムラーの仏ハンバッハ工場、4人乗りモデルはスロベニアのノヴォ・メストにあるルノー工場で生産する計画だ。共同開発モデルでは電気自動車も用意する。

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エンジン分野ではルノー・日産が3気筒、4気筒のガソリン、ディーゼルエンジンをダイムラーに供給。3気筒エンジンは次世代スマート、4気筒エンジンはメルセデス・ベンツブランドのコンパクトカー「Aクラス」「Bクラス」の次世代モデルに搭載される。これにより、ルノー・日産は工場の稼働率を向上させる。一方、ダイムラーも日産の高級ブランド、インフィニティ向けに4気筒、6気筒のガソリン、ディーゼルエンジンを供給し、自社工場の稼働率を引き上げる。

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小型商用車に関してはメルセデス・ベンツが2012年以降に導入する商用バンのエントリーモデルを、ルノーが自社モデル「カングー」をベースに生産する。またルノー・日産はメルセデス・ベンツの中型バン「ヴィト」向けにディーゼルエンジンとトランスミッションを供給する。

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スマートの自力黒字化を断念

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今回の提携は小型車が中心となっている。ダイムラーが業績不振の小型車事業を再建したいと考えているためで、提携交渉も同社が投げかける形でスタートした。ダイムラーのツェッチェ社長は記者会見で、スマート事業の黒字化は単独では実現できないとの認識を示した。

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スマートは年間販売20万台という目標が1998年の市場投入以降、1度も達成されておらず、ダイムラーは06年に一時、同ブランドの売却も検討した。だが、小型車は先進国でも新興国でも販売のカギを握るほか、電気自動車の投入でも戦略的な意味を持つため方針を転換。車種を2人乗りモデルに絞り込むなどして再建に取り組んできた。これまでのところその成果は出ておらず、同社は新たな解決策を模索していた。

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ダイムラーが小型車を重視する背景には二酸化炭素(CO2)の排出規制が今後、強化されるとの事情もある。欧州連合(EU)では走行1キロメートル当たりのCO2排出量をメーカー平均で130グラム以下に抑えることが2012年から義務づけられ、違反したメーカーには超過排出量に応じて罰金が科させる。中・大型車が中心のダイムラーは09年の排出量が平均172.5グラム(ドイツで販売された車両)と多いく、デュースブルク・エッセン大学自動車リサーチセンターのドゥーデンフェファー教授は、同社モデルの排出量が削減されない場合、販売1台当たり1,945ユーロの罰金が科されると試算している。(グラフを参照)

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クライスラー合併の教訓反映

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ルノー・日産との提携は高級車メーカーであるダイムラーのブランドイメージを損なうリスクもはらんでいる。このため両者の共同プレスリリースには、部品や設計の共有を進めながらもエンジンやデザインでそれぞれのアイデンティティを維持・尊重する旨の文章が何度も出てくる。

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一方、競合のBMWは小型車「ミニ」のエンジンを仏PSAプジョー・シトロエンから調達、アウディも親会社フォルクスワーゲン(VW)とプラットフォームや部品の共有化を進めている。BMWとアウディではこれまでのところ、ブランドイメージの悪化は起きておらず、ダイムラーもルノー・日産との提携を慎重に進めれば、そうしたリスクは回避できるとみられる。

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ダイムラーは事業のグローバル化を目指し米クライスラーと合併したものの、成果が上がらず解消するという大きな痛手を受けた経緯がある。同社のツェッチェ社長はこれを踏まえ、「クライスラーとの件ではまず合併ありきで、協働の具体的な内容をあまり考えていなかった」と発言。今回の提携は具体的な内容から出発しており、二の足は踏まないとの見方を強調した。

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ダイムラーとルノー・日産の資本提携はそれぞれの陣営の株式3.1%を最低5年間持ち合うというもので、協力関係がうまく機能すれば維持・拡大、うまくいかなければ解消できるようになっている。

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