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2010/5/19

経済産業情報

病気休養のショイブレ財務相に意外な人からエール

この記事の要約

5月9日~10日未明にかけてベルギーの首都ブリュッセルで開催された欧州連合(EU)の緊急財務相会談。ギリシャ財政危機問題が他のユーロ国の飛び火するのを未然に防ぐ目的で急きょ開かれたこの会合で、ある意味最も重要な人物の姿が […]

5月9日~10日未明にかけてベルギーの首都ブリュッセルで開催された欧州連合(EU)の緊急財務相会談。ギリシャ財政危機問題が他のユーロ国の飛び火するのを未然に防ぐ目的で急きょ開かれたこの会合で、ある意味最も重要な人物の姿が途中から消えた。財政危機に陥ったユーロ加盟国への支援で最大の資金を提供するドイツのショイブレ財務相が病院に運び込まれたのである。

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原因は初めて服用した薬の副作用。9日夜のドイツのニュース番組では財務相会談の報道と並行して、その事実がテロップで何度も流されていた。

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この時点では「ちょっと気になるが、副作用なら1日ぐらいで収まるだろう」くらいにしか思われていなかった。

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だが、緊急財務相会談で取り決めた方針をドイツ政府が承認した11日の閣議にもショイブレ財務相の顔はなかった。こうなると「健康上の理由で大臣の職務を続けられないのではないか」といった観測が出てくるのが生臭い政治の世界の常である。本人が退任を言い出さない手前、さすがに自ら後継者を名乗り出る者はいなかったが、与党内にはおそらく虎視眈々とポスト・ショイブレの座をうかがう政治家がいたことだろう。

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そんないかがわしい空気に一喝を入れ、ショイブレ財務相に連帯を示した人物がいる。左翼党のラフォンテーヌ党首だ。同党首は自らの退任を翌日に控えた14日に公表された『ヴェルト』紙のインタビューで、「病気を理由に彼の職務遂行能力に疑問符をつけようとする企ては腹立たしい。止めるかどうかは本人が言うことだ」と述べ、下心の見え隠れするお節介をバッサリ切り捨てた。

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ラフォンテーヌ党首は構造改革路線を打ち出した社会民主党(SPD)から左派の党員を引き連れて脱党し、最左派の左翼党を設立した立役者。保守派のショイブレ財務相とは政治思想が180度異なるにも関わらず、なぜこうした態度に出たのだろうか。

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そこで考えてみると、2人にはいくつかの共通点があった。まずは70歳を数年後に控え、政治の第一線からはそろそろ退く時期にさしかかっていることだ。

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ラフォンテーヌ氏が短い期間ながら財務相を務めたことも共通項である。同氏はヴェルト紙に対しドイツの歴代財務相で最も高く評価するのは首相も経験したSPDのヘルムート・シュミット氏だと述べたうえで、ショイブレ財務相についても「かれを批判する凡百の連中よりはるかに優秀だ」と断言した。

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だが、2人を決定的に結び付けているのは、ドイツ統一の1990年にともに暴漢に襲われ重傷を負った体験である。ショイブレ氏はこのとき以来、車椅子の生活を余儀なくされている。

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ラフォンテーム氏はインタビューで「ショイブレ氏を襲った犯人は(その数カ月前に起きた)私に対する襲撃の報道から犯行を思い立ったと供述している。その意味で(われわれ2人に対する襲撃には)連関がある。私は1990年11月、ショイブレ氏を病院に見舞い、極めてプライベートな話をした。今でもよく覚えている」と語った。

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ラフォンテーヌ氏は襲撃事件のトラウマに長年、悩まされており、ショイブレ氏とは同じ境遇の者のみが持つ見えない絆でつながっているようだ。

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ショイブレ氏は週明けの17日から公務に復帰している。

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