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2010/6/2

経済産業情報

鉄鋼価格が下落見通し、形鋼では値下がりの兆し

この記事の要約

鉄鋼業界の業績回復が腰折れとなる懸念が出てきた。値上げを見越した在庫積み増しの動きがほぼ一巡する一方で、今後は工場稼働率の低下が予想されるためで、独大手鉄鋼商社Kloeckner(デュースブルク)のギスベルト・リュール社 […]

鉄鋼業界の業績回復が腰折れとなる懸念が出てきた。値上げを見越した在庫積み増しの動きがほぼ一巡する一方で、今後は工場稼働率の低下が予想されるためで、独大手鉄鋼商社Kloeckner(デュースブルク)のギスベルト・リュール社長は経済紙『ファイナンシャル・タイムズ(ドイツ版)』に対し、向こう数カ月以内に鉄鋼価格が下落するとの見方を示した。形鋼ではすでに値下がりの兆しが現れており、平鋼価格も6~7月がピークになると予測している。

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鉄鋼需要はここ数カ月、急速に回復している。これについてリュール社長は、「値上げを見越した川下産業の顧客が注文を前倒しした結果に過ぎず、実需が増加したわけではない」と指摘する。鉄鉱石大手は4月、100%の大幅値上げ要求を貫徹しており、欧州鉄鋼最大手アルセロール・ミタルはこれを受けて5月、熱延コイル1トン当たりの価格を7月から170ユーロ引き上げ650ユーロとする方針を発表した。

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鉄鋼メーカーはこれまで、需要増に合わせて生産能力を強化してきた。リュール社長は需要が後退に転じた時にメーカーの対応が遅れれば供給過剰で価格が下落するのみならず、原料の値上がり分を顧客に転嫁できなくなるとの懸念を表明した。

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供給過剰懸念の背景には、欧州では鉄鋼のおよそ3分の2が高炉で生産されていることがある。高炉は火を落としてから再び稼働できるまでに数週間を要するため、短期的に生産量を調整することが難しい。

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鉄鋼価格が今後、下落するとの見方は市場関係者の間でも強く、バンクオブアメリカ・メリルリンチは実需の低迷を受け第3四半期以降に値下げ圧力が高まると予想。スイスUBSのアナリストは鉄鋼価格が15~20%下落するとみている。

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