ドイツの企業が採用応募者にドイツ語能力を要求するのは当然であろう。言葉ができないことには他の職員や取引先との意思疎通ができず、仕事にならないからだ。
\では、応募者には実際のところ、どの程度の能力が要求されるのだろうか。あるいはまた、ドイツ語能力をどのような方法で判定したらよいのだろうか。こうした問題に関する係争で今年1月、ハンブルク労働裁判所が興味深い判決を下した。
\裁判を起こしたのはドイツポストの配達人募集に応募したフランス語を母語とするアフリカ系市民。応募資格には「ドイツ語を会話と筆記面で自由に使いこなせること」と明記されていた。
\同社は応募者への最初のコンタクトを通常、採用担当者が電話で行い、その際、電話の応対で応募者のドイツ語能力をチェックしてきた。原告に対してはドイツ語で「自転車に乗れますか」と質問。回答のドイツ語が明瞭でなかったため、応募規準に達していないと判断し、不採用とした。
\これを受け原告は民族的な出自を理由とする差別を禁止した一般平等待遇法(AGG)を根拠にドイツポストを相手取って損害賠償を請求した。ハンブルク労裁の裁判官はこの訴えを認め、同社の行為はAGGで禁じられた「間接的な差別(mittelbare Benachteilung)」に当たるとの判決(訴訟番号:25 Ca 282/09)を下した。
\判決理由で裁判官は、電話による短い会話のやり取りでドイツ語能力を判断するのは不適切だとの判断を示した。また、配達業務に必要なのは顧客、雇用主、同僚との意思疎通能力であり、流暢なドイツ語を話し書くことを採用条件にするのは過剰な要求だと指摘した。
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