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2010/6/9

ゲシェフトフューラーの豆知識

病気解雇が可能な条件

この記事の要約

社員が病気で長期間、仕事に従事できなくなることは雇用主にとって頭の痛い問題である。できれば職場に復帰してもらいたいという思いがあっても、いつまでたっても治らないようなら最終的に厳しい判断を下さなければならないためだ。\ […]

社員が病気で長期間、仕事に従事できなくなることは雇用主にとって頭の痛い問題である。できれば職場に復帰してもらいたいという思いがあっても、いつまでたっても治らないようなら最終的に厳しい判断を下さなければならないためだ。

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では、被用者の権利が法律でしっかり守られているこのドイツで、どのような条件を満たしていれば解雇できるのだろうか。そうした判断をするうえで役に立つ判決(訴訟番号:9 Sa 683/08)をラインラント・ファルツ州労働裁判所が昨年4月に下したので概要を記してみたい。

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裁判を起こしたのはメーカーに勤務していた機械工A。Aは癲癇(てんかん)を理由に2006年2月22日から欠勤となった。発作が起きた場合に備えて常に誰かがそばにつきそっていなければならない状態で、機械操作を再開できるめどはなく、他の勤務に切り替えることも不可能だった。このため雇用主は07年11月7日、雇用関係を08年5月31日付で解除することを通告した。

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原告はこれを不服として提訴。解雇撤回を求めたが、第1審のコブレンツ労働裁判所は同年7月、原告の訴えを退ける判決(訴訟番号:4 Ca 2857/07)を下した。

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第2審のラインラント・ファルツ州労裁がこの判決を支持し、上告を認めない決定も下したため、裁判は終了した。判決理由で裁判官は(1)今後2年間は治癒の見込みがないとの診断がある(2)機械工以外の仕事を任せられないことを雇用主が証明した――の2点を指摘。この条件を満たしている以上、解雇は社会的な観点から正当化できるとの判断を示した。

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