男は翌朝を彼女の家で迎えるはずだった。2人は付き合い始めたばかりのホヤホヤのカップル。満ち足りた一夜を過ごすことで愛情が深まる、そんなシナリオが2人の頭にあったことだろう。
\だが、世の中はやはり「一寸先は闇」であり、何が起こるかわ分からない。飛んだお邪魔虫というか暴風雨というか、まあそんなものが現れたのである。
\ダン・ダン・ダン・ダン・ダンと家のドアをまるでハンマーで叩くかのような音。さらに「出てこい! ぶっ殺してやる」とわめく男の声も壁を突き抜けて響いてくる。ムードは一気に吹き飛んでしまった。
\この物騒な男は彼女の元カレ。嫉妬の爆弾をとどまることなく炸裂させた次第で、その「爆風」にさらされた今カレは委縮して、とうとうタンスの中に隠れてしまった。ドアを壊して侵入するような勢いだったのだろう。
\隠れた今カレは警察に通報。電話に出た署員ははじめ、いたずらではないかと疑ったが、電話口からものすごい音が聞こえてきたため、すぐにパトカー2台を派遣した。
\警察官が駆けつけると、元カレの姿はすでになかった。その事実を携帯電話でタンスの中の今カレ君に伝えると、彼は彼女の家を逃げだすように去ってしまったという。よほど怖かったのであろう。
\警察によると、残された彼女は乱れたタンスの中を1人で整理したとのこと。余計なお世話ながら、醜態をさらした今カレが振られないことを願うばかりである。
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