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2010/7/28

総合 - ドイツ経済ニュース

ブロッコリー特許めぐり欧州特許庁で口頭弁論

この記事の要約

ミュンヘンにある欧州特許庁(EPA)で20日、英Planet Bioscienceが保有する新品種のブロッコリー特許の有効性をめぐる口頭弁論が開催された。遺伝子マーキングを用いて特定の遺伝子を持つ個体を選び出し交配させる […]

ミュンヘンにある欧州特許庁(EPA)で20日、英Planet Bioscienceが保有する新品種のブロッコリー特許の有効性をめぐる口頭弁論が開催された。遺伝子マーキングを用いて特定の遺伝子を持つ個体を選び出し交配させるという作出法が「新たな技術による発明」に当たるかどうかを問うもので、原告側は「伝統的な交配によって作られたものでEU特許保護の対象にならない」と無効を訴えている。EPAは年内に結論をまとめる方針だ。

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Planet Bioscienceは抗酸化作用のあるスルフォラファン(Sulforaphane)という物質の含有量が従来品種の百倍(同社比)に達する新品種のブロッコリー開発に成功し、2002年に欧州特許を取得した(欧州特許番号:EP 1069819)。これに対し競合のシンジェンタ(スイス)とリマグラン(フランス)が、「ある特徴を持つ株を選んで交配させることは根本的には生物学的な手法であり、技術的な発明には当たらない」として異議を申し立てている。

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EUでは特許付与に必要な基準を満たせば生物に対しても特許が付与される。『ハンデルスブラット』によると、植物の特許は約1,300件あり、うち1,220件が遺伝子組み換え技術によるもので、残りの80件が今回のブロッコリー同様に交配で開発されている。

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20日の口頭弁論では、イスラエルの企業が取得した水分含有量の少ないトマトの特許についてもあわせて審理の対象となったが、出席者は「生物学的な手法」や「技術的な発明」「交配」といった言葉の解釈をめぐる言い争いに終始し、進展がみられなかったもようだ。

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ただ、ブロッコリーの特許をめぐる論争の根底にあるのは定義や解釈ではなく、「(ある技法によって生まれた)動植物がそもそも特許保護の対象になるのか」という問題だ。Planet Bioscienceとイスラエルの企業の特許では作出法にとどまらず、種子およびその播種によって収穫された作物までが保護の対象となっている。大衆紙『Bild』の言葉を借りれば「消費者はトマトやブロッコリーを買うたび特許料を支払わなくてはならない」。Planet Bioscienceなどの特許が認められれば今後、交配によって生まれた動植物そのものにも特許の範囲が広がることになる。

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このため、口頭弁論が開かれた欧州特許庁の前では動植物の特許に反対するおよそ300の環境保護団体が抗議行動を展開。農業団体も交配を特許の対象にしないよう訴えた。

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