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2011/5/18

ゲシェフトフューラーの豆知識

違法に収集した証拠で解雇は無効

この記事の要約

社内で不正が行われている疑いがある場合、事実関係を解明するのは雇用主の責務である。放置すれば甚大な問題に発展する恐れがあるし、従業員の規律にも影響しかねないからだ。だが、疑わしい社員を突き止めるために違法な手段を用いると […]

社内で不正が行われている疑いがある場合、事実関係を解明するのは雇用主の責務である。放置すれば甚大な問題に発展する恐れがあるし、従業員の規律にも影響しかねないからだ。だが、疑わしい社員を突き止めるために違法な手段を用いると、処分ができなくなるため注意を要する。ここではこの問題をデュッセルドルフ労働裁判所が9日に下した判決(訴訟番号:11 Ca 7326/10)に即してお伝えする。

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裁判で争ったのはデュッセルドルフ市にあるビールメーカーの労使。社員用のビールサーバーからビールを注いで飲んだにもかかわらず、清算をきちんと行わない従業員がいたため、雇用主はひそかに監視カメラを設置。不正を行っていた者を特定し、解雇を通告した。解雇された社員はその取り消しを求めて裁判を起こした。

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第1審のデュッセルドルフ労裁は原告社員の訴えを認める判決を下した。判決理由で裁判官は、職場に監視カメラをひそかに設置できるのは疑わしい社員を検証可能な根拠に基づいて特定できている場合に限られると指摘。この要件を満たしていない(疑わしい社員の絞り込みができていない)にもかかわらず監視カメラを設置した雇用主の行為は違法だとして、違法収集証拠排除法則(違法な手段で得られた証拠の証拠能力を否定する法理)に基づき解雇無効を言い渡した。

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