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2011/5/18

ゲシェフトフューラーの豆知識

パイロット採用年齢の制限で違法判決

この記事の要約

特殊な職業訓練を必要とするポストでは採用年齢を制限しても差別に当たらない。これは2006年に施行された一般平等待遇法(AGG)10条第3文3項に明記されたルールである。しかし、年齢制限が許される「特殊な職業訓練を必要とす […]

特殊な職業訓練を必要とするポストでは採用年齢を制限しても差別に当たらない。これは2006年に施行された一般平等待遇法(AGG)10条第3文3項に明記されたルールである。しかし、年齢制限が許される「特殊な職業訓練を必要とするポスト」とは具体的にどうしたケースに当てはまるのかとなると、解釈が難しく、裁判に発展しやすい。ここではパイロットの採用年齢を制限した航空大手ルフトハンザの労使合意について最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が下した判決(訴訟番号:7 ABR 98/09)に即してお伝えする。

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ルフトハンザでは社外の養成機関で資格を取得したパイロットに対し採用年齢制限を設けてきた。原則は33歳未満で、同社が指定する特定の航空会社で資格を取得した者も38歳未満に設定されている。

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経営陣は2007年10月、国防軍でパイロットの資格を取得した34歳の応募者Cを11月1日付で採用することを決定し、従業員代表機関の同意を求めたところ、拒否された。国防軍で資格を取得したパイロットは採用年齢が33歳未満と定められていたためだ。

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同社はこれを受け、パイロットの採用年齢を制限した労使合意はAGGで禁止する不当な差別に当たるとして、同合意の無効を求める裁判を起こした。これに対し従業員代表は、年齢制限はAGG10条第3文3項で認められた特例に当たると反論。真っ向から対立した。

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裁判では1、2審ともルフトハンザが勝利。最終審の連邦労裁も下級審判決を支持した。判決理由で裁判官は社外でパイロット資格を得た者の採用年齢を低く設定することはAGGで禁止する不当な差別に当たるとの判断を示した。職業選択の自由と法の前の平等にも抵触するとしている。

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