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2011/6/1

経済産業情報

海運業界の補助金大幅カットで空洞化懸念

この記事の要約

ドイツ政府は5月27日から2日間ヴィルヘルムスハーフェンで開催された第8回国海洋会議で、海運業界に対する補助金を大幅に削減する方針を明らかにした。財政状況が厳しいためで、『Verkehrsrundschau』(オンライン […]

ドイツ政府は5月27日から2日間ヴィルヘルムスハーフェンで開催された第8回国海洋会議で、海運業界に対する補助金を大幅に削減する方針を明らかにした。財政状況が厳しいためで、『Verkehrsrundschau』(オンライン版)によると、今年からほぼ半額に引き下げる。これに対し業界側は、補助金をカットされればドイツ船籍の維持は不可能と反発。コストの安い国への船籍移行(フラッギングアウト)を余儀なくされ業界が空洞化するとして強い危機感を示した。

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海運業界への補助金は2003年、当時のシュレーダー政権が海運業界と結んだ協定に基づく措置。国際競争力の維持に向けて政府が補助金を出す見返りとして、独海運業界はフラッグアウトした船舶を600隻以上ドイツ船籍に戻すことを約束した。

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『南ドイツ新聞』によると、海運業界への補助金額は年5,700万ユーロに上る。内訳は船員の社会保障費向けが最も多く4,000万ユーロを占める。残りは船員養成(船上教育訓練)向けが800万ユーロ、船員の所得税控除が900万ユーロとなっている。

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ドイツ船籍船はクルーの国籍などの条件が厳しいため船員費が高く、独海運事業者連盟(VDR)によれば、コストの安いキプロスやマルタ船籍と比べ1隻当たり40万~50万ユーロ高という。このため、国内海運会社の保有する3,720隻のうちドイツ船籍は現在445隻に過ぎない。

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海運大手Hapag Lloydの関係者は『ファイナンシャル・タイムズ(ドイツ版、FTD)』に対し、「補助金カットは協定破り」と述べ政府の対応を厳しく批判。フラッギングアウトの再開方針を表明した。

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