欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2011/6/1

ゲシェフトフューラーの豆知識

グループ企業への事業移管で解雇は無効

この記事の要約

事業ないし事業の一部を廃止する場合は経営上の理由による整理解雇を実施できる。これは最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が2003年11月に下した判決(訴訟番号:2 AZR 48/03)で判例が定まっている。一方、事業ないし事 […]

事業ないし事業の一部を廃止する場合は経営上の理由による整理解雇を実施できる。これは最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が2003年11月に下した判決(訴訟番号:2 AZR 48/03)で判例が定まっている。一方、事業ないし事業の一部の譲渡の場合は、元の雇用主も新しい雇用主も解雇することができない。これについては民法613条a4項に明記されている。しかし、事業の譲渡と廃止の境界ラインはときに不明確なことがある。ここではBAGが5月26日に下した判決(訴訟番号: 8 AZR 37/10)に即してこの問題をお伝えする。

\

裁判を起こしたのはボーフム市に本社のある大手メーカーAがドイツ南部のバーデン地方に持つ子会社Bに勤務していたセールスエンジニア。A社は事業再編に伴いB社の事業の一部をスイスにある別の子会社Cに移管した。その際、有形・無形の生産手段の大半はB社から60キロほど離れたスイスの拠点に移された。

\

これに伴い雇用主は原告社員を一度解雇したうえで、C社で採用することを申し出たが、原告は解雇を不当として提訴した。法律専門サイトによると、C社の給与はB社よりも低かったという。

\

被告企業のB社は事業移管に伴い原告の勤務する部署を廃止したとして解雇は正当と主張。これに対し原告は、同部署はB社からC社に譲渡されたとして解雇無効を訴えた。

\

下級審のバーデン・ヴュルテンベルク州労働裁判所フライブルク支部は原告の訴えを認め、連邦労裁もこの判断を支持。B社からC社への事業移管は譲渡に相当し、解雇は民法613条aに違反するとの判断を示した。また、原告とB社の労働契約がドイツ法に基づいて結ばれていた以上、譲渡先がスイスの企業であっても独民法613条aの規定が適用されると言い渡した。

\