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2011/6/8

経済産業情報

食物アレルギーのアレルゲン免疫療法で一歩前進

この記事の要約

独連邦血清・ワクチン研究所(パウル・エーリヒ研究所)の戸田雅子博士を中心とする国際研究チームは、モモの主要アレルゲンである「Pru P 3」を低アレルギー性に加工する技術を開発した。加工したアレルゲンはアレルギー反応をほ […]

独連邦血清・ワクチン研究所(パウル・エーリヒ研究所)の戸田雅子博士を中心とする国際研究チームは、モモの主要アレルゲンである「Pru P 3」を低アレルギー性に加工する技術を開発した。加工したアレルゲンはアレルギー反応をほとんど起こさなかった一方、T細胞抗原性は保持された。この性質はワクチンを作る前提になることから、チームは食物アレルギーに対する免疫療法の実現につながると期待を寄せる。

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食物アレルギーとともに代表的なI型アレルギー疾患である花粉症の治療では、希釈した抗原(アレルゲンワクチン)を投与するアレルゲン免疫療法(減感作療法)が確立されている。一方、食物アレルギーでは原因となる食材を献立から排除する除去療法が基本となっている。食物抗原はアナフィラキシーショックなどの重度な反応を起こすリスクが非常に高く、安全性に問題があるためだ。こうした事情を受け、抗原を修飾あるいは加工することで低アレルゲン化することへの関心が近年、急速に高まっている。

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パウル・エーリヒ研究所、ウィーン大学、ザルツブルク大学、スペイン・タラゴナ病院からなる共同研究チームは、モモの主要アレルゲンであるPru P 3に対し、開裂とアルキル化によって化学修飾を行い、配向を制御した。加工前と後のPru P 3をモモアレルギー患者とマウスに投与し、免疫ブロット法と呼ばれる方法で反応性などを測定したところ、加工したPru P 3はIgE抗体に対する刺激活性をほとんど消失していた一方、T細胞に対する抗原性は保持していた。

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研究結果は『Journal of Allergy and Clinical Immunology』に掲載された。

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