欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2011/6/15

総合 - ドイツ経済ニュース

大腸菌の感染源を発芽野菜と特定、新規感染者の減少続く

この記事の要約

毒性の強い腸管出血性大腸菌O104の流行は大きな峠を一つ越えたもようだ。連邦保健省傘下のロベルト・コッホ研究所(RKI)と連邦リスク評価庁(BfR)、連邦消費者保護・食品安全庁(BVL)は10日、感染源はニーダーザクセン […]

毒性の強い腸管出血性大腸菌O104の流行は大きな峠を一つ越えたもようだ。連邦保健省傘下のロベルト・コッホ研究所(RKI)と連邦リスク評価庁(BfR)、連邦消費者保護・食品安全庁(BVL)は10日、感染源はニーダーザクセン州内にある有機農場ゲルトナーホーフ・ビーネンビュッテルが出荷した発芽野菜(スプラウト)であることが疫学調査で確実になった発表。これまで生で食べないよう注意を促してきたキュウリとトマト、葉物野菜について警戒を解除した。だが、スプラウトになぜO104が付着したのかは解明されておらず、当局は感染ルートの追跡を続けている。

\

O104の流行は5月中旬以降、北ドイツを中心に広がった。国内の感染者数は現在3,235人で、このうち782人は重症の溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こしている。14日にはこれまでで最年少の2歳児が死亡しており、死亡者数は36人まで拡大した。HUSを発症した患者のうちおよそ100人は腎臓機能が著しく損なわれたため、腎臓移植手術を受けるか、人工透析を一生受け続けるかしなければならない。

\

ただ、感染はすでに下火になっており、O104の新規感染者数は5月23日の155人、HUSの発症者数も同21日の61人をピークに一貫して減り続けている。

\

当初は感染源の見当がつかず、RKIは感染者の多くがキュウリとトマト、葉物野菜を大量に摂取していたことを受け、これらの野菜を生で食べないよう注意を促した。また、スペイン産のキュウリから大腸菌が検出されたため、同国産のキュウリが大量に回収される事態に発展した。このキュウリの大腸菌は後になって、毒性が比較的弱い別種の大腸菌であることが分かり、同国ではドイツに対する抗議活動が展開された。

\

\

感染者宅の発芽野菜から菌検出

\

\

ゲルトナーホーフ・ビーネンビュッテル農場に保健当局の疑いがかかったのは感染者の多くが同農場から出荷されたスプラウトを食べていたためだ。

\

当局が農場から直接持ち出して調べた製品からはこれまでのところ菌が検出されていない。だが、ボン近郊にある感染者の自宅のごみ箱から取り出された同農園の発芽野菜からはO104が初めて検出された。

\

また、農場職員のうち5人がO104に感染していたことも容疑の裏付けとなった。5人は同農場が手がけるブロッコリー、ニンニク、フェネグリークの発芽野菜を食べており、当局はこれら3種類が感染に関係している可能性が高いとみている。

\

当局は現在、同農場が発芽野菜の種を仕入れた時点で汚染されていた可能性があるとみて調査を進めている。市販の種を発芽させて食べたニーダーザクセン州の家族がO104に感染したためだ。BfRのアンドレアス・ヘンゼル所長は12日、「(発芽前の)種の段階で菌に汚染されていれば、衛生基準を守っても感染を防げない」ことを明らかにした。

\

ドイツで消費される発芽野菜の種は大部分が輸入されている。同農園もおよそ半分を中国から輸入しており、イルゼ・アイグナー消費者保護相は日曜版『フランクフルター・アルゲマイネ(FAS)』紙に対し、国外産も含め種子と発芽野菜の衛生基準を強化する意向を表明した。

\

発芽野菜については発芽に適した温度と湿度が細菌の繁殖に適しているため、安全性には以前から疑問が投げかけられていた。大腸菌のほか、サルモネラ菌やノロウィルスの温床になると指摘されている。

\

\

新タイプの医薬品開発も進行

\

\

一方、『ハンデルスブラット』紙によると、科学者の間には抗生物質の効かない腸管出血大腸菌に対する新タイプの医薬品を開発する動きがある。マックスプランク情報学研究所と共同で研究開発に取り組むザールブリュッケン大学のヤン・バウムバッハ教授は、O104のような有害な大腸菌と無害な大腸菌は遺伝子がほぼ共通し、異なるのは10未満にすぎないことに着目。これら異なる遺伝子のスイッチをオフにして腸管出血性大腸菌を無害化する医薬品の開発を目指している。遺伝子スイッチをオフにする医薬品は抗生物質と異なり菌を殺傷しないため、耐性菌が生まれる恐れがないという。

\

遺伝子スイッチの発見に向けては腸管出血性大腸菌の遺伝子データバンク「EhecRegNet」を立ち上げた。同データバンクは外部にも開放されており、世界各国の研究者は自由に利用できる。

\