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2011/6/29

ゲシェフトフューラーの豆知識

ドイツ語習得命令は民族差別に当たらず

この記事の要約

5年前の2006年8月に一般平等待遇法(AGG)が施行され、アパート賃貸や雇用などの経済活動で性別や年齢、人種、宗教、出自などを理由に差別することが明確に禁止された。この種の新しい法律が成立すると、そこに盛り込まれた権利 […]

5年前の2006年8月に一般平等待遇法(AGG)が施行され、アパート賃貸や雇用などの経済活動で性別や年齢、人種、宗教、出自などを理由に差別することが明確に禁止された。この種の新しい法律が成立すると、そこに盛り込まれた権利を根拠にこれまで泣き寝入りしていたようなケースでも訴訟が起こってくる。

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だが、そうした訴訟のなかには条文を拡大解釈したものも数多く含まれる。ここではAGGを根拠に外国人が雇用主を提訴した裁判に即してこの問題をお伝えする。

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裁判を起こしたのはプールの会計業務を統括する女性職員で、クロアチア語を母語としている。1985年に採用された当初は清掃業務を担当していたが、14年前から会計を担当するようになった。

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同職員は2006年春、語学学校のドイツ語コースに勤務時間外に自費で参加することを上司から要求された。費用負担を雇用主に求めたところ拒否されたため、AGGが禁じる民族差別に当たるとして1万5,000ユーロの損賠支払いを求めて提訴した。

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原告は第1、第2審で敗訴。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)も下級審判断を支持する判決(訴訟番号: 8 AZR 48/10)を下した。判決理由で裁判官は、業務遂行にドイツ語(ないし外国語)の習得が必要な場合、雇用主は語学学校のコースに参加し課程を修了することを要求できるとの判断を示した。

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勤務時間外にドイツ語学校に通うことと、コース参加費用を被用者が負担することを雇用主が要求した点については、労働契約や労使協定に抵触するケースもあり得るとしている。

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