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2011/6/29

ゲシェフトフューラーの豆知識

フルタイムの社員に所定労働時間の延長要求権なし

この記事の要約

ドイツ人は一般的に残業を嫌う。そうしたなかで労働契約に定められた所定労働時間の延長を要求する社員がいるというのは変に感じられるかもしれないが、なかにはそうした要求する被用者もいる。ここでは最高裁の連邦労働裁判所(BAG) […]

ドイツ人は一般的に残業を嫌う。そうしたなかで労働契約に定められた所定労働時間の延長を要求する社員がいるというのは変に感じられるかもしれないが、なかにはそうした要求する被用者もいる。ここでは最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が21日に下した判決(訴訟番号:9 AZR 236/10) に即してこの問題をお伝えする。

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裁判を起こしたのはケルン・ボン空港にある警備会社に勤務する社員。労働契約には「職員は月平均150時間勤務することを義務づけられる」と定められていたが、実際の勤務時間は月平均188時間に達していた。このため同社員は所定労働時間を188時間に引き上げることを要求。これが拒否されたため提訴した。労働力が不足している職場でパートタイマーに所定労働時間の延長請求権を認めた「パートタイムと有期労働契約に関する法律(TzBfG)」9条の規定を根拠とした。

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連邦労裁が下した判決は、原告に所定労働時間の延長要求権はないというものだった。判決理由で裁判官は、TzBfG9条の規定はパートタイマーを対象としたものだと指摘。フルタイム就労者の原告には適用されないと言い渡した。

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ただ、月平均労働時間を150時間とした労働契約の規定については、「平均」という言葉を使っているにもかかわらずどの期間を対象としたかが明記されておらず意味不明だとも指摘。そのような規定は民法典307条(不明確な普通契約約款規定を無効と規定)により無効だとした。そのうえで、警備業界の労使協定に定める最低労働時間160時間を所定労働時間とするよう命令した。

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弁護士事務所Noerrの弁護士が『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に語ったところによると、所定労働時間を引き上げると、病休時の給与支給額が高くなるなど被用者にはメリットがある。

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