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2011/7/6

経済産業情報

海運業界に新たな危機、値下げ競争で中小業者は淘汰も

この記事の要約

金融・経済危機の低迷から脱却したのも束の間、海運業界に新たな試練が訪れている。大手事業者が稼働率引き上げと顧客獲得に向けて昨年秋から値下げ攻勢を開始。ブレーメンの海運研究所(ISL)は、経営基盤の弱い中小業者はコストをカ […]

金融・経済危機の低迷から脱却したのも束の間、海運業界に新たな試練が訪れている。大手事業者が稼働率引き上げと顧客獲得に向けて昨年秋から値下げ攻勢を開始。ブレーメンの海運研究所(ISL)は、経営基盤の弱い中小業者はコストをカバーできず淘汰される恐れがあると懸念している。

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国際会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が独海運業者100社を対象に5~6月にかけて実施したアンケート調査によると、事業がフル稼働状態にあるとの回答は86%に上った。また、今後12カ月の業績予測をたずねたところ、「増収」が48%、「前年並み」が29%の計77%に達し、「減収」の23%を大きく上回った。

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稼働率向上にもかかわらず値下げ圧力が強まっている背景には、大型コンテナ船を相次いで導入したモラー・マースク(デンマーク)やMSC(スイス)など国際的な大手で輸送能力がだぶついていることがある。これら大型輸送船の大半は金融・経済危機で世界的な海運不況に陥る09年以前に発注されたもので、ハンブルクのAlster Researchによると、新船納入ラッシュは2013年まで続く見通しだ。海運大手は貨物積載率を引き上げるために値下げに踏み切らざるを得ず、上海~北欧間の20フィートコンテナ(TEU)1個当たり輸送料は今年初めの1,381ドルから現在は845ドルにまで下落している。業界関係者の間では損益分岐ラインが1,000ドル程度とされており、資金力の弱い小規模の事業者は収益悪化に耐えきれず、倒産や身売りに追い込まれる可能性がある。

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