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2011/7/6

経済産業情報

過度の飲酒運転でマイカー損害、車両保険は原則免責=最高裁

この記事の要約

過度の飲酒運転(酒酔い運転)で物損事故を起こしたドライバーへの車両補償をめぐる係争で、最高裁の連邦司法裁判所(BGH)は6月22日、重大な過失が認められる場合は保険金の支払いを全額拒否できるとの判断を示した(訴訟番号 I […]

過度の飲酒運転(酒酔い運転)で物損事故を起こしたドライバーへの車両補償をめぐる係争で、最高裁の連邦司法裁判所(BGH)は6月22日、重大な過失が認められる場合は保険金の支払いを全額拒否できるとの判断を示した(訴訟番号 IV ZR 225/10)。ただ、過失程度の判断については個別に事情を調べる必要があるとして、具体的な基準を明言しなかった。

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原告の男性は2008年7月、マイカーでロックコンサートに出かけ、酒を飲んで車で帰宅。この途中、カーブを曲がり切れずに道路脇の街路灯に衝突し、自動車の修理費用として6,422ユーロの損害が生じた。男性は事故発生から1時間半後の検査で血中アルコール濃度2.71パーミルが検出され、泥酔状態だった。

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男性は契約先の車両保険会社AachenMuenchenerに補償請求を行ったものの、飲酒運転で刑事罰を受けたことを理由に保険会社が一切の支払いを拒否したため、これを不当として裁判を起こした。

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この係争の背景にあるのは08年に施行された改正保険契約法(VVG)だ。旧VVGでは被保険者に重大な過失があった場合、保険金が全く下りないといった問題があったが、消費者の権利保護の観点から、改正法では過失の度合いに応じて保険金を減額する方式に改められた。このため、裁判では保険金の全額減額が認められるかが争点となった。

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BGHの裁判官は「運転できない状態(血中アルコール濃度1.1パーミル以上)であるにもかかわらずハンドルを握るなど、重大な過失が認められる場合、車両保険会社は保険金を全額減額できるとの判断を示した。その一方で、ドライバーが非常に強度の飲酒によって事故発生時に心神喪失状態(血中アルコール濃度3.0パーミル以上)にあったなど「責任無能力」と判断された場合は、保険会社は補償を拒否できないとした。ただ、この場合でも、ドライバーが心神喪失に陥る以前に、車で帰宅せずに済むためにあらゆる手段を講じていたかなどを検証する必要があると指摘。そのうえで、当該の件ではドライバーが事故当時に心神喪失に陥っていたかどうかが解明されていないとして、ドレスデン高等裁判所に審理を差し戻した。

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