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2011/8/3

経済産業情報

スピントンネル接合で磁気ゼーベック効果、観測に初成功

この記事の要約

スピントンネル接合(TMR)素子と呼ばれる磁性半導体で、磁性体の両端に温度勾配をつけると「磁気ゼーベック効果」と呼ばれる現象が起こることを、独米の共同研究チームが世界で初めて観測した。また、同効果の規模や変化の度合いは電 […]

スピントンネル接合(TMR)素子と呼ばれる磁性半導体で、磁性体の両端に温度勾配をつけると「磁気ゼーベック効果」と呼ばれる現象が起こることを、独米の共同研究チームが世界で初めて観測した。また、同効果の規模や変化の度合いは電極素子のナノスケールの原子配列のほか、温度によっても制御可能なことも合わせて確認した。研究チームは、これまでよりも高密度で電力消費量の少ない次世代磁気デバイスの開発につながると期待を寄せる。

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TMR素子は、非常に薄い絶縁体の薄膜を強磁性体で挟んだ素子で、磁性体の電極層の磁化の方向によって電気抵抗が変化する(トンネル磁気抵抗効果)。磁化の方向(スピンの向き)が反対(反平行)であれば電気が通りにくく、同じ方向(平行)であれば通りやすい。この性質を利用しているのがMRAM(磁気ランダムアクセスメモリ)で、大容量、高速、不揮発性という記憶素子に求められる三大要素を全て兼ね備える次世代の記憶媒体として注目を集めている。

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磁気ゼーベック効果は、ゼーベック係数(温度差を電圧に変換する特性を表わす指標の1つ。この値が大きいほど熱を電気エネルギーに変換しやすい)が変化する現象。同効果が起こったかどうかは電圧を測定することで直接確認できるという。

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独ゲッティンゲン大、ギーセン大、ビーレフェルト大と米マサチューセッツ工科大学(MIT)の共同研究チームは今回、強磁性体として鉄とコバルトのナノ結晶合金、絶縁体として酸化マグネシウムを用いたTMR素子を用いて実験を実施。レーザー光を照射して温度勾配をつけたところ、強磁性体電極の磁化の方向が平行から反平行に変化するのに伴い、強磁性体の両端に生じる電位差にも変化が生じたことが確認された。測定したゼーベック係数は反平行時が-107.9μV/K、平行時が-99.2μV/K、差は-8.7μV/Kで、磁気ゼーベック効果は8.8%だった。

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今回の研究は『Nature Nanomaterials』に掲載された。

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