ドイツ政府は21日、スイスとの租税協定に調印した。スイスの銀行を利用したドイツの納税義務者の脱税を防止するのが柱で、過去の脱税についても追徴課税が行われる。両国は今後、批准手続きを進め、2013年1月の発効を目指す。ただ、ドイツの野党は批准阻止の方針を打ち出しており、協定が成立するかは不透明だ。
\ドイツでは所得税などの税率が高く、これを嫌った富裕層は租税回避地(タックスヘイブン)であるスイスやリヒテンシュタインの銀行に資産を隠匿してきた。今回の協定はこうした手口による脱税をできなくするもので、ドイツ在住者がスイスに持つ預金には今後、ドイツ国内の金融資産と同じ税金(金融資産税と連帯税で税率は計26.375%。キリスト教徒であれば教会税も加わる)が適用。銀行口座から源泉徴収されて独税務当局に送金される。
\これまでの脱税に対しては19~34%の追徴課税が行われる。各人に適用される税率は脱税の期間と金額に応じて異なる。この措置によりドイツの入る税収は不明。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、ドイツ政府は約100億ユーロ、スイス銀行協会は200億~250億ユーロと見込んでいるという。
\スイスに銀行口座を持つドイツの納税義務者の氏名は独当局に提供されない。これによりスイスは「銀行の秘密」(顧客に関する情報を守秘する義務と外部への情報提供を拒否する権利)を今後も維持できる。
\独野党の社会民主党(SPD)などはこれにより脱税者の匿名性が保たれるのは問題だと批判。協定内容を変更しなければ議会で批准に反対する方針を示している。今回の協定の成立には連邦議会(下院)と州の代表で構成される連邦参議院(上院)の承認が必要だが、連邦参議院では与党が過半数議席を割り込んでいるため、現状では批准が否決される可能性が高い。スイスは国民投票で批准を行う。
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