フッ素イオンが電気伝導を担う新たな二次電池を、カールスルーエ工科大学(KIT)の研究チームが開発した。ありふれたフッ素を使うことで低価格化と大量供給が可能になるほか、リチウムイオン電池に比べ最高で10倍のエネルギー密度が得られるという。
\エネルギー密度や価格といったバッテリーの性能向上は電気自動車(EV)を本格普及させるうえで必須の課題となっている。二次電池で現在主流のリチウムイオンは航続距離や価格面で問題があり、現状ではEVの普及効果を期待できない。
\フッ素は酸化力(電子を奪う性質)が非常に強く、これまでもリチウムイオン電池の添加剤として使われていたが、KITナノテク研究所(INT)のマクシミリアン・フィヒトナー博士を中心とする研究チームはフッ素を主役にした新たな二次電池の開発に着手。試行錯誤の末、正極にフッ化金属、負極に金属を使用するフッ素イオン電池の試作品を完成させた。仕組みは、◇放電時にはフッ素イオンが電解質を通って陰極に到達し、電子を渡してフッ素化合物となって貯蔵される(還元)◇逆に充電時には陰極のフッ素化合物が電子をもらってフッ素イオンとなり陽極に吸収される(酸化)――という可逆的な酸化還元反応で、基本的にリチウムイオン電池と同じ。
\研究の成果は『Journal of Materials Chemistry』に掲載された。
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