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2011/12/7

経済産業情報

キャッシング被害、「使われたカードが本物か」の立証責任は銀行に

この記事の要約

カードと暗証番号を利用したキャッシング犯罪にからむ民事訴訟で、最高裁の連邦司法裁判所(BGH)は11月29日、銀行側はカード保有者の過失を問う前に、キャッシングに本物のカードが使用されたことを立証する責任を負うとの判断を […]

カードと暗証番号を利用したキャッシング犯罪にからむ民事訴訟で、最高裁の連邦司法裁判所(BGH)は11月29日、銀行側はカード保有者の過失を問う前に、キャッシングに本物のカードが使用されたことを立証する責任を負うとの判断を示した。スキミングなどによって持ち主の了解なく複製された(偽造された)カードで不正に引き出されるケースなどがあると指摘。カードが暗証番号とともに使用されたというだけでは持ち主の過失の度合いを正確に判断できないと言い渡した(訴訟番号:XI ZR 370/10)。

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被告の男性は、原告の銀行が発行するクレジットカードを保有していた。同行の約款により、キャッシングによる引き出し額は1日1,000ユーロに制限されていたが、2008年8月12日の夜から13日の朝にかけて計3,000ユーロ(500ユーロずつで6回)がキャッシュディスペンサーから引き出された。男性はこれに異議申し立てをしたうえで、カードを解約した。一方、銀行側は「現金が引き出されたのは男性が暗証番号の管理義務を怠ったため」と反論。引き出し額とほぼ同額(2,996ユーロ)の支払いを求めて裁判を起こした。

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BGHの裁判官は「当該のカードで現金を引き出した者は暗証番号を1度も間違えることなく入力しており、本人が引き出したか、カードと暗証番号が一緒に保管されていたために他人に悪用された」可能性は排除できないと前置きしながらも、スキミングによってカードと暗証番号のデータが盗まれた可能性もあり、銀行側はまずこの事実関係を究明する必要があると指摘。さらに、銀行側は限度額を超えた引き出しを認めるなど自ら約款に違反しており、全額の損害賠償請求はそもそもできないと言明し、前審のウルム地方裁判所に審理を差し戻した。

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