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2011/12/14

総合 - ドイツ経済ニュース

独6行がストレステスト不合格に、資本不足は計131億ユーロ

この記事の要約

欧州連合(EU)の欧州銀行監督機構(EBA)は8日、欧州の主要銀行を対象とした第3回目のストレステスト(健全性審査)の結果を発表した。ユーロ危機の深刻化を受けて実施された今回の審査では域内の71行のうち31行が不合格とな […]

欧州連合(EU)の欧州銀行監督機構(EBA)は8日、欧州の主要銀行を対象とした第3回目のストレステスト(健全性審査)の結果を発表した。ユーロ危機の深刻化を受けて実施された今回の審査では域内の71行のうち31行が不合格となり、ドイツも13行中6行が資本不足と認定された。不合格となった銀行は来年半ばまでに狭義の中核資本比率を9%に引き上げる計画を1月20日までに提出しなければならない。

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不合格となった欧州31行の資本不足額は計1,147億ユーロに達した。不足額は深刻な財政危機に陥っている南欧諸国で特に多く、ギリシャの銀行は計300億ユーロに上っている。スペインとイタリアはそれぞれ262億ユーロ、154億ユーロで、ポルトガルは70億ユーロだった。フランスは73億ユーロ。(グラフ1を参照)

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ドイツは6行の不足額が131億ユーロに達した。額が最も多いのはコメルツ銀行で53億500万ユーロ。これにドイツ銀行が32億3,900万ユーロで続く。このほか州立銀行3行(北ドイツ州立銀行、Helaba、ヴェストLB)と信用協同組合の上部銀行DZ Bankも不合格となった。(グラフ2を参照)

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前回のストレステストの結果は7月に発表されたばかりだが、ギリシャに端を発した信用不安がイタリア、スペインなど財政が悪化している大国に波及する懸念が第3四半期以降に現実味を帯びてきたため、EUは10月の首脳会議で域内行の狭義の中核自己資本比率を来年6月末までに9%まで引き上げることを決定。EBAはこれを受けて今回の審査を急きょ実施した。

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前回のストレステストではリスク資産の査定が6月末日付で行われたのに対し、今回は同9月末日付で実施された。この間に南欧諸国を中心に国債の時価は大幅に下落。銀行の簿価との間に大きなずれが生じており、これが今回の査定で資本不足の認定を受ける金融機関の増加につながった。前回のストレステストでは合格基準が低く設定されていたこともあり、不合格となったEU域内の銀行は8行にとどまっていた。

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コメルツ銀は公的支援再要請か

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コメルツ銀行は不動産金融子会社のユーロヒポが最大の足かせとなっている。同子会社は第3四半期以降に金利が急上昇しているイタリア国債だけでも80億ユーロを保有。コメルツ銀は同子会社を手放したいものの、買い手がつかないのが実情だ。資本増強はリスク資産の縮小と増資を通して実現したいとしているが、狭義の中核資本比率を自力で9%に引き上げるのは難しく、市場では公的支援を仰がざるを得ないとの見方が強い。

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同行はリーマンショック後の金融危機でも公的支援を受け、現在も国の出資を受けている。ドイツ政府はコメルツ銀への新たな資本注入を視野に入れて、これまで休止していた金融市場安定化基金(Soffin)の新規支援業務を再開させた。12日付ロイター通信によると、再支援要請に向けた協議はすでに始まっているもようだ。

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一方、ドイツ銀行とDZ Bankはリスク資産の圧縮を通して9%を達成する意向で、増資は検討していない。北ドイツ州立銀行とHelabaは出資者である州が「匿名出資(stille Einlage)」という変則的な出資を狭義の中核自己資本に転換することを通して9%のハードルをクリアする。両行はリーマンショックで経営が悪化した他の州立銀と異なり公的支援を受けていない。ヴェストLBは2012年6月末までに解体されるため、資本増強の必要がない。

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