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2012/1/25

経済産業情報

原子12個で1ビットの情報記録、磁気記憶素子の高密度化に期待

この記事の要約

1ビット分(コンピュータが処理する情報の最小単位)の情報をわずか12個の原子で記録する手法の開発に、独マックス・プランク固体研究所(MPI-FKF)と米IBMアルマデン研究所の共同研究チームが成功した。隣り合うスピンが互 […]

1ビット分(コンピュータが処理する情報の最小単位)の情報をわずか12個の原子で記録する手法の開発に、独マックス・プランク固体研究所(MPI-FKF)と米IBMアルマデン研究所の共同研究チームが成功した。隣り合うスピンが互いに逆方向を向く「反強磁性」の性質を逆手にとって素子となる原子の密度を引き上げるのがポイントで、既存のハードディスクに比べ面記録密度を100倍に引き上げられるという。

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反強磁性体とは隣接するスピンが互いに反対方向を向こうとする性質がある物質のこと。正方格子状にスピンを配置した場合、逆向きのスピンが市松模様に整列した配置が最も安定している。また、磁気モーメントを互いに打ち消し合うため、外側に対しては磁場が発生しない。

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従来のハードディスクで使用されている強磁性体では、個々のスピンが全て同じ方向を向いているため、大きな磁場が発生する。このため、隣り合う磁場同士が干渉しないよう原子の距離をある程度離す必要があり、磁気記憶媒体の記憶密度を引き上げるうえで物理的な障害になっていた。これに対し、反強磁性体では磁場が発生しないため、原子を密接させることが可能だ。

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MPI-FKFとIBMのチームは、窒化銅(CuN3)薄膜の上に、隣接するスピンが互いに逆向きになるように鉄原子を配置してゆき、配置のパターンを様々に変えて記憶素子としての特性を調査。この結果、6個の原子を2列に並べた時に磁性が最も安定していることを突き止めた。

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ただ、12個の原子が記憶素子として機能するのはマイナス258度(5ケルビン)以下と超低温の時に限られる。IBMの研究者は、常温で同じ安定度を得るには200個弱の原子が必要になると試算しており、実用化には時間がかかるとしている。

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研究の成果は『Science』誌に掲載された。

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