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2012/2/1

総合 - ドイツ経済ニュース

サムスン電子に競争法違反容疑、欧州委が調査開始

この記事の要約

韓国のサムスン電子にとって手痛い出来事が1月31日、欧州で2つ起きた。1つは知財権をめぐる競合アップルとの係争でサムスン製タブレット端末2機種の販売を禁止した下級審判決をドイツのデュッセルドルフ高等裁判所が支持したこと、 […]

韓国のサムスン電子にとって手痛い出来事が1月31日、欧州で2つ起きた。1つは知財権をめぐる競合アップルとの係争でサムスン製タブレット端末2機種の販売を禁止した下級審判決をドイツのデュッセルドルフ高等裁判所が支持したこと、もう1つは欧州連合(EU)の欧州委員会が競争法違反の容疑でサムスンに対する正式調査を開始したことだ。欧州委の調査は同社が競合企業に対する特許訴訟をEU域内で相次いで起こしたことが引き金となっており、積極的な訴訟攻勢を通して市場競争で有利に立とうとする同社の戦略は裏目に出た格好となった。

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欧州委は昨秋サムスンとアップルに対し、移動体通信システムの規格に関する特許権の行使状況についてEU競争法に基づく予備調査に着手した。アップルは移動体通信規格に関連する特許をほとんど所有していないため、調査は実質的にサムスンを標的にしたものと当初からみられていた。

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同委によると、サムスンは1998年以降、携帯電話の製品化に不可欠な標準特許を競合企業に「公正な条件でライセンス供与」することを義務づけられている。これはある製品の製造に不可欠な標準特許に関しては、誰でも利用できるようにし、標準特許を持つ企業が後発メーカーの活動を妨害するのを防ぐ「FRAND(fair, reasonable and non-discriminatory)」と呼ばれる仕組みに基づくものだ。

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欧州委はサムスンが特許訴訟を次々と起こしたことで、この義務に違反した可能性があると判断。市場での独占的な地位の濫用を禁止した「欧州連合の機能に関する条約(TFEU)」102条に抵触していないかを調査していく。

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サムスンの広報担当者はメディアの問い合わせに対し「まずは(欧州委の)決定の詳細をよく検討しなければならない」としてコメントを控えている。

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高裁は意匠権侵害認めず

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デュッセルドルフ高裁が31日に判決を下したのはサムスンのタブレットPC「ギャラクシータブ 10.1」と「ギャラクシータブ 8.9」をめぐる係争だ。アップルは両製品が自社の意匠権を侵害しているとして昨年4月に提訴していた。

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第1審のデュッセルドルフ地方裁判所は9月の判決で、両タブレット端末はデザインやインターフェースが自社製品iPadと酷似しているとするアップルの主張を認め、国内販売を禁止。第2審のデュッセルドルフ高裁も販売禁止を言い渡したため、サムスンの両端末はドイツで販売できないことが確定した。

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同高裁はサムスン製端末がアップルの意匠権を侵害しているとする地裁判断については破棄した。そのうえで、両端末は「iPadの極めて高い評判とプレステージ価値を不当に利用している」と指摘、不当な模倣を禁止した不当競争禁止法(UWG)4条9項bの規定に抵触しているとの判断を示した。

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アップルの意匠権を侵害していないとする理由については(1)iPadの特徴であるフレームなしのディスプレーはすでに第3者企業により米国で特許登録されており、アップルの意匠権は制限を受ける(2)ギャラクシータブ 10.1とギャラクシータブ 8.9の外形はアップルの意匠登録デザインと大きく異なる――の2点を挙げた。

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サムスンは同判決に遺憾の意を表明した。ただ、両端末はすでにドイツで販売しておらず、経済的な打撃は受けない。

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また、意匠権を侵害されたとするアップルの主張が認められなかったことは、ドイツ以外の国での係争でサムスンに有利に働く可能性があり、専門家の間には実質的に勝訴したのはサムスンだとの見方もある。

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サムスンはギャラクシータブ 10.1の外形に変更を加えた機種「ギャラクシータブ 10.1N」を第1審判決後の11月にドイツで発売した。アップルは同端末に対しても意匠権侵害訴訟をデュッセルドルフ地裁に起こしたものの、裁判官は口頭弁論で意匠権侵害に当たらないとの暫定見解を示しており、アップルは敗訴する可能性が高い。判決は今月9日に下される予定だ。

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