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2012/2/29

ゲシェフトフューラーの豆知識

高給取りでなければサービス残業は違法

この記事の要約

日本ではサービス残業(無給の時間外労働)が当たり前のように行われている。だが、その習慣をドイツに持ち込むと痛い目をみる可能性が高い。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)がこの問題に関する係争で判決(訴訟番号:5 AZR 76 […]

日本ではサービス残業(無給の時間外労働)が当たり前のように行われている。だが、その習慣をドイツに持ち込むと痛い目をみる可能性が高い。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)がこの問題に関する係争で判決(訴訟番号:5 AZR 765/10)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは運送会社の元倉庫管理主任。月給は1,800ユーロ(支給額ベース)で、労働契約書には残業手当を支給しないと記されていた。このため、同社に勤務していた間は残業代を請求しなかったが、退職後に2006~08年の残業手当として総額968ユーロを請求。裁判となった。

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原告は第2審のザクセン・アンハルト州労働裁判所で敗訴したものの、最終審のBAGは第2審判決を破棄。残業代の支払いを被告企業に命じた。判決理由で裁判官は、事情から判断して給与の支払いなしに業務が行われることが考えられない場合は、給与の支払いについて暗黙の合意が成立したとみなされるとした民法典(BGB)612条1項の規定を指摘。原告の月給が1,800ユーロと低い事情を踏まえると、この規定が適用されるとの判断を示した。また、残業手当を支給しないとした労働契約の取り決めについては、文面が不正確で意味不明だと指摘。定義が不明確で理解不能な労働契約の取り決めを無効とするとした民法典(BGB)307条1項の規定に基づき、無効だと言い渡した。

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