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2012/3/7

ゲシェフトフューラーの豆知識

雇用差別訴訟、提訴期限は損賠請求から3カ月以内

この記事の要約

職場や求人募集で差別を受けた者が一般平等待遇法(AGG)15条に基づいて損害賠償訴訟を起こす場合は、企業などに損賠支払いを文書で請求してから3カ月以内に提訴しなければならない。これは労働裁判法(ArbGG)61条bに明記 […]

職場や求人募集で差別を受けた者が一般平等待遇法(AGG)15条に基づいて損害賠償訴訟を起こす場合は、企業などに損賠支払いを文書で請求してから3カ月以内に提訴しなければならない。これは労働裁判法(ArbGG)61条bに明記されたルールである。このルールに絡んだ係争でシュツットガルト労働裁判所が1月に判決(訴訟番号:Ca 1059/11)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは労働局の斡旋を受けて労働局の相談窓口職の求人募集に応募した重度の障害者。応募に際しては障害者であることを証明する文書を添付した。

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原告は書類選考で振るい落とされ、面接に進むことができなかった。これを受けて労働局に苦情の文書を送付。労働局は2011年2月15日付の文書で、選考に際して障害者証明書を見落とす手落ちがあったことを認めて謝罪したうえで、次回の求人募集に応募することを要請した。

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これに対し、原告は書類選考で不採用となったのは障害者差別に当たりAGGに違反するとして、2月21日付の文書で損害賠償金3万1,709.16ユーロの支払いを労働局に要求した。

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労働局は損賠支払いを拒否した。それと同時に、前回の募集と同等のポストで求人募集を行うことを説明し、改めて応募するように要請した。

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だが、原告はこれに応募せず、AGG15条に基づく損賠訴訟を6月17日に起こした。労働局に損賠請求してからは約4カ月が過ぎており、期限の3カ月をオーバーしていた。原告はこれについて、被告・労働局にはAGG12条5項に基づいて提訴期限が3カ月であることを原告に知らせる義務があったにもかかわらず、怠ったと主張した。

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これに対し、シュツットガルト労裁は提訴期限を過ぎているとして訴えを退けた。労働局には提訴期限が3カ月であることを原告に知らせる義務があったとする主張については、恣意的な法解釈だとの判断を示した。

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AGG12条5項は一般平等待遇法(AGG)の全文と労働裁判法61条b、およびAGGに基づく社員の苦情への対処を掲示板やイントラネットを通して社内(ないし官庁内)に周知させることを雇用主に義務づけた規則。求人募集者など外部の者にまで知らせることは雇用主に義務づけられていない。

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裁判官は控訴を認めなかった。

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