ドイツの賃金が急速に上昇している。リーマンショック後の金融・経済危機から速やかに立ち直り、企業業績が大きく拡大しているためで、2011年の人件費上昇率は1997年の統計開始以降で最大の3.2%に達した。好決算を受けて従業員に業績連動の特別ボーナスを支給する企業も多く、労組は今春の賃金交渉で強気の姿勢を押し出している。
\労使は金融・経済危機の際に雇用の維持を最優先することで利害が一致。賃上げを抑制し操短も積極的に活用した。このため、2010年は人件費の上昇が抑えられた。
\景気回復は2010年中に鮮明になった。労組はこれを受けて、2011年の賃金交渉で大幅なベースアップを要求。化学業界では同年春に4.1%の大幅ベアが行われた。
\2011年の業績に連動したボーナスの支給を大手企業は最近、相次いで決定している。その傾向は自動車業界で特に強く、フォルクスワーゲン(VW)は独西部の6工場の従業員およそ9万人に対し1人当たり7,500ユーロを支給する。業績が好調だった昨年実績(4,000ユーロ)を約9割上回る水準だ。高級車子会社アウディは8,251ユーロ、競合ダイムラーも4,000ユーロを支給する。
\化学大手も水準が高く、BASFは一人平均6,200ユーロ、バイエルは月給の80~140%に相当する額をそれぞれ支給する。
\労組は企業の好業績を踏まえ、今春の賃金交渉で利益の配分を要求している。金属労組はベア6.5%、化学労組も同6%を打ち出した。公共部門で先ごろ警告ストを実施したサービス労組Verdiは、2段階に分けて賃金を計3.3%引き上げるとした雇用主側(連邦と市町村)の回答を低すぎると批判。受け入れを拒否した。
\一方、金属雇用者団体ゲザムトメタルのカンネギーサー会長は「(金属)業界の5社に1社は2011年に赤字を計上した」と指摘。業績が好調な企業のボーナス支給を根拠に労組が大幅ベアを正当化することをけん制した。
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