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2012/4/4

総合 - ドイツ経済ニュース

石油高騰が景気のリスク要因に

この記事の要約

燃料価格の上昇が経済の懸念材料として浮上してきた。ドイツの景気をけん引している個人消費の冷え込みのほか、企業利益の圧迫やインフレリスクの増大にもつながりかねないためだ。こうした事態を回避するために市民の税負担を軽減するよ […]

燃料価格の上昇が経済の懸念材料として浮上してきた。ドイツの景気をけん引している個人消費の冷え込みのほか、企業利益の圧迫やインフレリスクの増大にもつながりかねないためだ。こうした事態を回避するために市民の税負担を軽減するよう要求する声が経済界などから上がっているが、政府内では足並みがそろっていない。

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全ドイツ自動車クラブ(ADAC)によると、ハイオクガソリンの市販価格は3月31日に平均1ユーロ70セントを超え、過去最高を更新した。昨年末に比べるとガソリン価格は7.4%上昇したとの試算もある。

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燃料価格が高騰するのはイラン問題などを背景に原油価格が上昇しているためだ。北海産原油ブレントの価格は年初からこれまでにユーロ換算で12%以上、上昇した。

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燃料価格が上昇すると、個人消費は余力が損なわれる。Deka-Bankのアナリストは『ハンデルスブラット』紙に対し「ガソリン価格が夏季バカンスの終了前に大きく下がらないと、消費者の購買力は低下する」との見方を示した。インフレが加速し、燃料以外の製品やサービスの価格も上昇することを踏まえた指摘だ。

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欧州債務問題に対処するために欧州中央銀行(ECB)が大量の資金を市中に供給していることは物価高騰に拍車をかける恐れがある。

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独商工会議所連合会(DIHK)は「ガソリン価格が(1リットル)2ユーロを超えるようだと、景気に悪影響が出る」(ヴァンスレーベン専務理事)と指摘。自動車燃料の価格がさらに上昇する場合はエネルギー税を引き下げて燃料価格を押し下げるよう政府に要求している。

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ガソリンに課税されるエネルギー税は1リットル当たり65セントに上る。『南ドイツ新聞』によると、税込みのガソリン価格が1リットル=1.71ユーロの場合、税を除いた価格は全体の46%に当たる79セントで、残り54%はエネルギー税と付加価値税(27セント)が占める。

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政府与党内からはすでに、市民の税負担軽減を求める声が出ており、フィリップ・レスラー経済相兼副首相(自由民主党党首)は通勤税控除の引き上げを提言した。

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通勤税控除(Entfernungspauschale)は通勤距離に応じて税控除を認める制度で、徒歩通勤であっても利用できる。控除額は現在、1キロメートル当たり30セントとなっている。

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一方、アンゲラ・メルケル首相(キリスト教民主同盟党首)は通勤税控除の引き上げに反対している。同控除枠を拡大すると、自動車で通勤していない人も税負担を軽減されるため、ガソリン高への対策としては適切でないというのが理由だ。

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