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2012/4/18

総合 - ドイツ経済ニュース

独自動車メーカーは勝ち組に、FTA締結で韓国車のEU輸出急増

この記事の要約

ドイツの自動車メーカーが好調だ。コンサルティング大手アーンスト・アンド・ヤング(E&Y)の調査によると、フォルクスワーゲン(VW)は2011年の連結売上高を1,593億ユーロへと大きく伸ばし、トヨタ自動車を抜い […]

ドイツの自動車メーカーが好調だ。コンサルティング大手アーンスト・アンド・ヤング(E&Y)の調査によると、フォルクスワーゲン(VW)は2011年の連結売上高を1,593億ユーロへと大きく伸ばし、トヨタ自動車を抜いて初めて世界1位に躍り出た。他のメーカーも業績を大きく拡大しており、独メーカーは韓国勢とともに勝ち組グループを形成している。

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E&Yは世界の主要17社の2011年業績を比較した。それによると、合計の売上高は1兆1,660億ユーロで、前年に比べ4%増加。伸び率が最も高かったのはVWで26%に達した。商用車大手MANの買収のほか、販売実績を世界的に拡大したことが大きい。BMWとダイムラーもそれぞれ14%増、9%増と平均を大きく上回る伸びを確保した。現代自動車は16%増、起亜自動車は20%増だった。

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日本勢は東日本大震災とタイ洪水の影響で軒並み減収となった。減収幅はトヨタが6%、日産が8%、ホンダが9%、三菱自動車が11%、スズキが17%、マツダが25%。

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販売台数でも独メーカーは好調で、VWは15%、BMWは14%、ダイムラーは8%の幅でそれぞれ拡大した。新興諸国で実績を伸ばしていることが背景にある。特に世界最大の市場となった中国で販売を増やし続けていることが大きい。急速に増加する同国の富裕層の間では独高級車の人気が高く、昨年はVW傘下のアウディの最大の市場となった。BMWにとっても中国は今年第1四半期、米国を抜いて最も大きな市場となっている。

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韓国メーカーは現代が14%販売を伸ばし、起亜は24%増を記録した。両社の躍進の背景には技術力の向上やデザインの改善のほか、同国政府が自由貿易協定(FTA)の締結を積極的に推し進めていることがある。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が韓国税関の統計をもとに報じたところによると、欧州連合(EU)とのFTAが発効した昨年7月から今年3月までの9カ月間に韓国からEUに輸出された自動車は前年同期から4分の3以上増えて30万台を突破した。そのしわ寄せを受けているのは競合関係にある欧州の大衆車メーカーと日本勢だ。EU域内でのフィアットの乗用車新車登録台数は昨年、12.1%減少、PSAとルノーもそれぞれ9.0%、8.4%落ち込んだ。日本車ではマツダとホンダが20%以上後退し、トヨタも6.4%減少している。

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中国依存をBMW社長は警戒

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主要17社の収益力では独韓メーカーが上位5位を独占した。トップに立ったのはBMWで、売上高営業利益率(EBITベース)を前年の8.5%から11.7%へと拡大。2位の現代も同8.8%から10.4%へと伸ばした。ダイムラーと起亜はともに8.2%で3位につけ、5位にはVWが入った。BMWは効率改善に向けた取り組みと世界的な販売好調が奏功。特に、1台当たりの利益率が高い中国で需要が伸びていることは強力な追い風となっているようだ。

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中国は今年に入ってもドイツメーカーの成長の原動力となっており、同市場でのアウディの第1四半期販売台数は前年同期比40.5%増の6万4,122台に拡大。BMWも36.8%増の8万14台に達した。ダイムラーは5万1,328台で、19.5%増加している。

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同国でのドイツ車の需要拡大はしばらく続く可能性が高く、アウディは販売台数を2015年までにドイツの2倍の70万台へと増やす計画だ。

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ただ、中国市場への依存度が極度に高まることに対しては警戒感を示す経営者もいる。『ハンデルスブラット』紙によると、BMWのライトホーファー社長は同市場を「甘い毒」と表現。主要市場の販売台数をバランスを取りながら伸ばしていく考えを示している。

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