欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2012/4/18

経済産業情報

後発薬割引契約のコスト効果鮮明に

この記事の要約

公的健康保険が後発医薬品(ジェネリック薬)メーカーと個別に割引契約を結べる制度が開始されてから、この4月で5年を迎えた。同制度を活用するのは当初AOKに限られていたが、現在ではほとんど全ての公的健保が導入。AOKは過去5 […]

公的健康保険が後発医薬品(ジェネリック薬)メーカーと個別に割引契約を結べる制度が開始されてから、この4月で5年を迎えた。同制度を活用するのは当初AOKに限られていたが、現在ではほとんど全ての公的健保が導入。AOKは過去5年で薬剤費を16億ユーロ、他の健保も2011年の1年間で合わせて13億ユーロを節約した。その一方で、資金力の弱い中小メーカーが市場から脱落する結果、多くの薬効成分で大手による寡占が進んでいる。13日付『ハンデルスブラット』紙が報じた。

\

AOKの関係者によると、割引契約では市価(薬局販売価格)の半額というケースも稀ではなく、なかには受注を勝ち取るために9割引という破格の値段を提示するメーカーもある。こうした値引き競争はメーカーの経営を圧迫しており、製薬大手Stadaでは後発医薬品の国内売上高が昨年、前年を9%も下回った。メーカーは「利益を確保できない」と悲鳴をあげるが、入札で契約を獲得できなければ市場シェアを一気に失うため「嫌でも参加せざるを得ない」(Tevaの関係者)という。

\

ただ、過度の価格競争は公的健保にも悪影響を及す可能性があるとの指摘もある。後発薬業界団体Pro Generikaによると、割引契約を獲得したメーカーが151社に上る一方で、対象となる医薬品に占める上位10社のシェアはAOKの場合で97%に上る。ブレーメン大学のグラスケ教授は「価格競争力の低い中小メーカーが市場から駆逐され、国外や特許薬の販売などで目減り分を相殺できる国際的な大手メーカーだけが生き残れば市場の寡占が進み、健全な競争は機能しなくなる」と指摘。長期的には大手メーカーの価格交渉力が高まり、公的健保は割引を得にくくなるとの見方を示した。

\