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2012/5/9

ゲシェフトフューラーの豆知識

公募ポスト、有期雇用かどうかを明記する必要なし

この記事の要約

空きポストが発生した場合、従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)は新規採用者を社内公募で募集するよう経営者に要求できる。これは事業所体制法(BetrVG)93条に明記されたルールである。同法99条2 […]

空きポストが発生した場合、従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)は新規採用者を社内公募で募集するよう経営者に要求できる。これは事業所体制法(BetrVG)93条に明記されたルールである。同法99条2項5にはさらに、同93条に基づく要求にも関わらず雇用主が社内公募を行わなかった場合、事業所委は新規採用者の承認を拒否できると明記されている。このルールに関する係争でシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労働裁判所が3月に判決(訴訟番号:2 TaBV 37/11)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは病院経営者。同経営者は2011年7月6日、定年退職した看護婦のポストを埋めるためにローカル紙に求人募集の広告を出すとともに、社内の掲示板で社内公募を行った。最終的に外部からの応募者の採用を決定し、事業所委に同意を求めた。

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その際、新規採用する看護婦とは有期雇用契約を結ぶ考えだと伝えたところ、事業所委は募集しているポストが有期契約か無期契約かという問題は応募を検討する者にとって決定的に重要なポイントだと主張。この条件を伏せて行った公募は不当だとして同意を拒否した。有期雇用か無期雇用かが分からないために応募を見合わせた者がいる可能性があり、適切な公募ではなかったとの論理である。

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原告の病院経営者は事業所委の同意拒否を不当として提訴した。第1審では敗訴したものの、第2審のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労裁は逆転勝訴を言い渡した。

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判決理由で裁判官はまず、事業所委は社内公募の実施を明確には要求しなかったものの、総合的に判断して要求したと断定できると指摘。同委はBetrVG93条に基づく要求を行ったと認定した。

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そのうえで、公募に際して労働契約期限を明記しなければならないとする法律の規定はないと指摘。事業所委は拒否権を行使できないと言い渡した。

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また、BetrVG93条は企業内部の人材が公募に参加できるようにすることを目的としていることを確認。社内公募を行った時点でこの目的は満たされたとして、原告経営者に落ち度はなかったとの判断を示した。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上告を認めている。

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