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2012/5/9

ゲシェフトフューラーの豆知識

解雇訴訟のカベ、小企業の被用者には高し

この記事の要約

従業員5人以下の企業には解雇保護法(KSchG)に基づく被用者の保護規定が原則として適用されない(即時解雇の場合を除く)。これはKSchG23条1項に規定されたルールで、被用者が2004年1月1日以降に採用された場合は雇 […]

従業員5人以下の企業には解雇保護法(KSchG)に基づく被用者の保護規定が原則として適用されない(即時解雇の場合を除く)。これはKSchG23条1項に規定されたルールで、被用者が2004年1月1日以降に採用された場合は雇用規模の上限が10人に拡大する。いずれにせよ、小企業で働く被用者は解雇通告を受けても対抗手段である権利が小さいわけである。ここではそうした境遇の被用者が解雇無効を訴えて起こした裁判に即してこの問題をみていきたい。

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裁判を起こしたのは当局の委託を受けて重債務者の相談業務を手がける小企業に1999年11月末から勤務していた職員。月給(支給額ベース)は2,755ユーロだった。

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雇用主は当局が業務委託の支払い条件を変更したことを受けて、2011年3月から基本給を月1,400ユーロとし残りは同職員が行う相談件数などに応じて支払う方式に改めることを打診。月給は2,780ユーロを上限とするとした。

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これに対し同職員は受け入れを拒否。その後2011年2月23日付の文書で、同年8月末日付の通常解雇を雇用主から通告されたため、これを不当として提訴した。

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提訴に際しては主に民法典(BGB)の2つの条文を根拠とした。1つは「雇用主は合意や措置を取る際に、被用者が適切な方法で権利を行使したことを理由にその被用者を不利に取り扱ってはならない」とした612a条の規定、もう1つは242条に定められた信義義務である。

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第1審のゼンフテンベルク労働裁判所は原告の訴えを棄却、第2審のベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所も1審判決を支持した(訴訟番号:6 Sa 2266/11)。裁判官は612a条に基づく原告の訴えについて、被告は給与条件の変更を受け入れなかったことを理由に原告を解雇したのではなく、当局の支払い条件変更を受けて原告に対する給与支払い条件の変更を余儀なくされたにすぎないと指摘。被告は同条の規定に違反していないとの判断を示した。

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一方、242条に基づく訴えについては、新しい給与支給基準に移行すると原告の月給が減少する恐れがあるにもかかわらず、被告はそれを回避するための措置を提案したり話し合うことをしなかったと指摘。これは不当な行為だと断定した。だが、小企業で働く原告には解雇保護規定が適用されないとして、同条を理由に解雇を無効とすることはできないと言い渡した。

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この問題については最高裁の判例が確定していないため、裁判官は連邦労働裁判所(BAG)への上告を認めた。

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