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2012/5/23

経済産業情報

新規抗てんかん薬に「際立った治療効果なし」 

この記事の要約

新規特許薬の価格取り決めに関する法令(AMNOG、11年1月施行)に基づき審査を受けていたグラクソ・スミスクライン(GSK)の抗てんかん剤、「レチガビン」(製品名:トロバルト)に対し薬効評価を担当する第三者機関G-BAは […]

新規特許薬の価格取り決めに関する法令(AMNOG、11年1月施行)に基づき審査を受けていたグラクソ・スミスクライン(GSK)の抗てんかん剤、「レチガビン」(製品名:トロバルト)に対し薬効評価を担当する第三者機関G-BAはこのほど、既存薬より優れた効果は「ない」とする査定結果を発表した。同薬は国内販売価格の引き下げが避けられない状況で、GSKは公的健保に対し妥協案を提示している。

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GSKによると、レチガビンに対しネガティブな評価が下ったのは同社が提出した治験データに不備があったため。GSKは審査途中でデータを提出し直したものの、差し替えは認められなかったという。このため「G-BAの査定の方法には問題があり、受け入れられない」と強い不満を表明。査定内容を精査したうえで、再審査を受ける方針を表明した。

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ただ、再審査には1年を要するうえ、最終的な決着がつくまでは現行の査定結果が有効なため、GSKは大きな困難を抱えることになる。

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AMNOGの規定によれば、際立った治療効果が認められなかった新薬の価格は、G-BAが比較に使用した既存薬(ジェネリック薬)と同等かそれ以下に制限される。レチガビンの薬価は投与1日当たり5.3ユーロ。一方、比較対象とされるジェネリック薬は同1.2ユーロに過ぎない。

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実際の取引価格は公的健保との交渉で決定されるが、6~7割の値下げが避けられない。また、交渉価格は公表が義務づけられている。多くの国ではドイツの薬価を参照して自国の薬価を決めるため、ドイツ国内の価格が下がれば他国でも値下げ圧力が高まり、同社が巨額の損失を出す恐れがある。

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GSKはこうした最悪のシナリオを避けるため、公的健保に対し、公式の取引価格を従来(メーカー価格)水準に据え置いたうえで、ジェネリック薬との差額を値引き分として健保に支払うことを提案。健保側が妥協に応じなければレチガビンのドイツ販売を中止せざるを得ないとして、前向きの対応を求めている。

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